2021/8/29

管理職の深夜割増賃金の実態

管理職の深夜割増賃金の実態

 前々回、前回と、労働政策研究・研修機構(JIL)の「管理職の働き方に関する調査」により管理職の仕事の裁量度を見てきたが、この調査で他にいくつか気になる項目があったので、今回はそのうちの1つを取り上げたい。テーマは管理職の深夜労働割増賃金の実態である。


 労働基準法では、管理監督者に時間外労働や休日労働に対する割増賃金を支給する必要はないが、深夜労働に対する割増賃金は必要である。人事担当者はともかく、当の管理職者は、このことを知らない人も多いのではないだろうか。というのも、実際に支給されていないケースがよくあるからだ。

管理職の深夜割増賃金の実態

 その実態について、JILの「事業所調査」では次の通りとなっている。

・支払っている(70.5%)
・支払っていない(29.5%)

規模別にみると、

・10~49 人(70.1%)
・100~299人(75.7%)
・300~999 人(80.1%)
・1,000 人以上(92.0%)

 と、規模が大きくなるほど支払っている割合は高くなっている。

 どのような形で支払っているかについては、

・実際に労働した時間に対して割増分を支払い(85.0%)
・管理職手当等に含めて支払い(11.1%)
・その他、不明(3.9%)

 となっている。「管理職手当等に含めて支払い」は給与規程でよく見かける気がするが、1割ほどしかないのは少し意外である。

 支払っていない理由としては、

・深夜に及ぶ業務がないから(79.2%)
・管理職には、深夜割増を適用する理由はないと考えているから(10.7%)
・その他、不明(10.1%)

 となっている。2番目の項目は明らかに違法であるが、これを規模別に見ると以下の通りである。

・10~49人(10.6%)
・50~99人(10.9%)
・100~299人(13.5%)
・300~999人(10.9%)
・1,000人以上(0.0%)

 さすがに大規模企業ではゼロだが、300人以上でも1割あるのはいかがなものか。

 最後に、役職クラス別の支給実態を見てみよう(労働者調査)。

・支社長等クラス(57.6%)
・部長クラス(64.9%)
・部次長クラス(74.9%)
・課長クラス(73.7%)
・課長代理クラス(73.6%)
・係長クラス(79.8%)

 役職が下位になるほど支給割合が高まる傾向にあるのは理解できるが、部次長クラス以下は大差ない。

 このように、JILの調査では、管理職に対する深夜労働割増賃金は結構な割合で支給されていることが示された。「あまり支給されていない」というのが筆者の感覚であったが、どうやら修正が求められそうである。         

 


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