2021/5/23

テレワークが普及しない

テレワーク普及しない
 コロナ禍において、政府はテレワーク活用による出勤者の7割削減を推し進めている。5月11日には西村経済再生担当大臣が経済団体の代表に、テレワークのさらなる促進と実施状況の公表を求めた。もっとも、経団連の古賀・審議員会議長が「数字の1人歩きだけは厳に慎んでいかなければ」と述べるなど、財界の反応は鈍い。

 リクルートワークス研究所がテレワーク実施率の定点観測を行っており、これによると、

・コロナ前(2019年12月)8.8%
・1回目の緊急事態宣言下 32.8%
・2020年12月 18.1%
・2回目の緊急事態宣言下 25.4%
  (リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2021」結果)
 
 となっており、1回目に比べて2回目の取り組み度合いは明らかに低下していることがわかる。

 ただ、業種による違いも大きく、実施率の高い業種は以下の通りとなっている。
 
①情報通信業(1回目62.1% 2回目54.7%)
②教育・学習支援(1回目52.8% 2回目24.6%)
③公務(1回目45.6% 2回目27.4%)
④金融・保険業(1回目42.5% 2回目35.6%)
⑤不動産業(1回目39.1%、2回目29.5%)
 
 情報通信業、金融・保険業においては、1 回目の宣言以降、継続してテレワークを実施している傾向がみられるが、教育・学習支援、公務においては2回目の低下が顕著である。

 一方、実施率の低い業種は以下の通りである。

①飲食店・宿泊業(1回目12.9%、2回目5.9%)
②医療・福祉(1回目13.0%、2回目11.0%)
③運輸業(1回目16.5%、2回目12.0%)
 
 業種別はある程度想定の範囲内といえるだろう。それでは、役員や管理職といった職種別ではどうなのだろうか。

 帝国データバンクが5月14日に発表した「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」結果によると、自社の業務時間全体に占めるテレワークの実施時間を職種別にみると、

・経営層(役員) 平均11.2%
・管理職 同11.8%
・内勤職 同13.4%
・外勤職 同12.4%
 
 となっており、大差はないが、非管理職>管理職>経営層と職位が上に行くほどテレワークに消極的な様子がうかがえる。

 テレワークを実施していない割合は 以下の通りだ。
 
・経営層(役員) 68.8%
・管理職 64.6%
・内勤職 61.3%
・外勤職 64.1%

 こちらも職位が上に行くほど未実施の割合が高くなっており、役職が高くなるにつれテレワークをしなくなるといえそうだ。

 その要因としては、

①経営層や管理職の仕事は、多数の人とのコミュニケーションが求められるのでテレワークをしづらい
②比較的年齢が高く、これまでの仕事の仕方を変えづらい
 
 の両方があると思う。とはいえ、「やろうと思えばできるが、今さら面倒なことをしたくない」というのが多いのではないだろうか。何事もそうだが、トップやリーダーが率先して行わなければ部下は従わない。テレワーク普及の鍵の1つは経営層・管理者の意識と行動にあるのも事実だろう。

 さて、現状でこのような状況なのだから、今後、ワクチン接種が広まれば、テレワーク利用者はますます減っていくと予想される。政府の出勤者7割削減という目標も未達になる、というより目標そのものが忘れ去られそうである。      
 

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