2020/8/10

在宅勤務と通勤手当

 
 コロナ禍の下、在宅勤務が普及し、毎日会社に行く必要性が薄れてきた。そうすると通勤手当をどうするかという課題が出てくる。在宅勤務が一時的なものならともかく、今後も恒常的に続けるのであれば、対応を考えなければならない。本稿にて対応の仕方を整理してみよう。

 対応にあたっての選択肢は大きく以下の3つである。

1.これまで通りに支給する
2.出社したときだけ支給する
3.不支給とする
 
1.これまで通りに支給する
 在宅勤務実施日が週1日以下など、限定的な場合に考えられる選択である。ただし、6ヵ月定期ならともかく、1ヵ月あるいは3ヵ月の定期券代を支給している場合は、実際の通勤費用よりも定期券の方が高くなる可能性が高い。6ヵ月定期に切り替えるほか、2の実費支給も検討すべきである。

2.出社したときだけ支給する
 在宅勤務実施日が週2日以上のときは、こちらのほうがコスト削減できると考えられる。ICカードやスマホによる改札が普及した現在では、以前のように切符を買う必要はないので、通勤時の社員の手間は定期券と変わらないはずだ。毎月の通勤費を申告・精算してもらう形となるのでその手間はあるが、システム化すればそれほど煩雑とはならないだろう。
 留意が必要なのは、残業代と同様、その月の分はその月に支給しなければならないことだ。実費支給といっても賃金に変わりはないので、「全額払いの原則」を徹底しなければならない。

3.不支給とする
 賃金は労働の対価なので、本来、通勤手当は支給不要のものである。現に欧米企業では、通勤手当はないのが普通とされる。この原則に立ち返り、通勤手当を廃止してしまうというのも1つの考え方だ。できれば、原資はテレワーク手当のような形で社員に還元したい。全社員が原則在宅勤務といった企業であれば、一考に値すると思う。
 必要があって出社する場合は、通勤費の実費支給とする。その意味で、2と実質的には同じだが、通勤手当という項目を廃止するので、こちらのほうが大胆な改革といえる。なお、通勤手当という名目でなくても通勤に係る実費は社会保険料の計算基礎になるので注意したい。

 在宅勤務の実態に応じて、1・2・3のいずれか、あるいは1と2の併用という取り扱いになると思う。基本的には、定期券に係る費用と実費との比較になるが、定期券には、社員が通勤以外のプライベートにも活用できるメリットがある。また、経路内に訪問先がある場合は業務にも使えるなど会社側のコスト削減効果も見込める。こういった点も考慮のうえ、対応の仕方を検討したい。     
 

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