2020/7/26

コロナで労災が認められるケース

 社員が新型コロナウイルスに感染した場合、どのようなときに労災が認められるかが厚生労働省から示されている。「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」という通達である。

 これによると、国内で感染した場合に認められるのは次の3つのケースである(下線は筆者)。

1.医療従事者等(医者・看護師・介護従事者など)は、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となる。

2.医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されたものは、感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合に保険給付の対象となる。

3.医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されない場合であっても、感染リスクが相対的に高いと考えられる次のような労働環境下での業務に従事し、業務により感染した蓋然性が高い場合は保険給付の対象となる。
(ア)複数の感染者が確認された労働環境下での業務  
(イ)顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務

 このうち1と2のケースは、比較的判断が容易である。ただ、労働者全体からすると、発生件数が多いのは3と思われる。

 3の(ア)は職場でクラスターが起きたようなケースで、判断はわかりやすい。もっとも、最初の感染者は労災に該当しない可能性が高いが、特定が困難であれば全員が給付対象となると考えられる。

 一方の(イ)は、「顧客等との近接や接触の機会が多い」というあいまいな要件のため、判断は少し難しくなる。

 典型例としては小売業だろう。本通達に関して、厚労省は「新型コロナウイルス感染症に係る労災認定事例」というのも示しており、(イ)のケースとして、小売店販売員の事例を掲げている。感染者は日々数十人の顧客と接しており、私生活での感染リスクも低かったことから、労災認定されたという事例だ。

 小売業の他にどのような業種が該当するかといえば、厚労省HPの「新型コロナウイルスに関するQ&A」によると、バス・タクシー等の運送業務、育児サービス業務等を想定しているとのことだ。

 これら以外の業種でも顧客と接する社員は多い。「Q&A」では、「他の業務でも、感染リスクが高いと考えられる労働環境下の業務に従事していた場合には、(中略)、個別に業務との関連性を判断」するとのことだが、認定要件は厳しくなるだろう。顧客と言っても、不特定多数の顧客が原則で、普段から取引をしている顧客との接触では認められない可能性が高い。

 3に関して、もう1つ注意が必要なのは、(ア)(イ)に該当する業務の従事者であっても、プライベートでのリスクがあれば認められない可能性があることだ。たとえば、夜の飲み会に頻繁に出かけているような場合は、そこでの感染も疑われるため、認定されない可能性が高まるだろう。この点、1のように業務外での感染が明らかでなければ認められるのとは大違いである。

 以上からすると、特定の業種以外は、職場でのクラスター発生による感染を除き、労災認定を受けるのは難しいと言えそうである。     
 

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