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2020/5/25

黒川検事長の「訓告」は甘いか

 国家公務員の懲戒処分がこれほど話題になったことはないだろう。ときの人、東京高検の黒川検事長が外出自粛中に賭けマージャンをしたとして「訓告」を受けた。訓告は、懲戒処分の前段階の矯正措置の一つである。もう一つの厳重注意より重いとはいえ、ネット等では、「訓告では甘すぎる」「懲戒解雇だ」といった意見が飛び交っている。

 国家公務員の懲戒処分は、人事院の指針(「懲戒処分の指針について」)で、どのような行為にどういう処分をすべきかの基準が示されている。黒川氏を擁護するわけではないが、処分内容は指針に基づいて冷静に判断されなければならない。

 それでは、指針において賭博行為はどうなっているかといえば、

ア 賭博をした職員は、減給又は戒告とする。
イ 常習として賭博をした職員は、停職とする。

 となっている。国家公務員の懲戒処分は、重い方から免職・停職・減給・戒告の4つで、黒川氏は上記アイのいずれにも該当しないということだ。

 法務省の調査結果では、次の事実が示されている。

①賭け金は、1日に1~2万円程度の現金のやり取り
②回数は、3年間に1か月1~2回。ただし、5月の2回以外は具体的な日付を特定できていない。

 法務省が具体的にどういう論拠で判断をしたかは不明だが、

①について、賭けマージャンとして一般的なレートによるもので、違法性は低い
②について、具体的事実が明らかでないので常習性は判断できない

  といったものなのだろうか。

 ちなみに、「常習」とはどういうことかだが、刑法186条に常習賭博罪というのがあり、その常習性の判断は、「判例・通説によれば、賭博を反復累行する習癖ある者を指し、必ずしも博徒又は遊人に限られない(最判昭和23年7月29日刑集2巻6号1067頁)。常習かどうかは賭博行為の内容、賭けた金額、賭博行為の回数、前科の有無などを総合的に判断して決せられる」(ウィキペディア)とのことである。

 微妙なところだが、少なくとも「回数」面では常習性が高いといえそうだ。金額に関しても1回1~2万円程度だったにしても、3年に渡れば50万円は優に超えるはずで、金額面でも常習性ありとの判断も無理ではない。どうも常習に該当しそうなので、具体的事実を不明にしたとも勘ぐれる。

 さて、もう1つ判断要素に加えなければならないのは、氏がただの公務員ではなく、司法に関して強大な公権力を持つ検察官の事実上ナンバーツーの地位にあるという点だ。

 指針には、具体的な処分量定の決定に当たっては、

①非違行為の動機、態様及び結果はどのようなものであったか、などともに、
③非違行為を行った職員の職責はどのようなものであったか、その職責は非違行為との関係でどのように評価すべきか
④他の職員及び社会に与える影響はどのようなものであるか

 とある。当たり前だが、氏は自分の行為が(実態はともかく形式的には)刑法の賭博罪に当たることを認識していたはずだ。加えて、定年延長問題で自分が世間の注目を集めており、さらにコロナに伴う自粛要請中であることも踏まえれば、発覚すれば、検察の権威を失墜させることもわかっていたはずだ。
 仮に、賭けマージャンが過去のことであり、コロナ後は“自粛”していたのであれば、世間の見方も違ったと思われる。

 そう考えると、③④は、処分の決定にあたって重きを置かざるを得ない。

 さらに指針では、「標準例に掲げる処分の種類より重いものとすることが考えられる場合」として、

・非違行為を行った職員が管理又は監督の地位にあるなどその職責が特に高いとき
・非違行為の公務内外に及ぼす影響が特に大きいとき

 を示しており、これらもそのまま本件に当てはまると考えられる。

 以上から、「訓告」とする今回の決定は、指針から判断しても甘いといえそうだ。民間企業の懲戒処分のレベルから見ると、少なくとも減給、場合によっては停職という判断が妥当ではないかと思われる。結局のところ、世間一般の意見のほうが妥当性は高いようだ。

 なお、本日5月25日の報道によれば、法務省は懲戒処分が妥当としたものの、官邸の意向で訓告になったとのこと。事実であれば、処分判断に関する法務省の威厳は保ったかもしれないが、官邸に屈したという意味で検察の権威はますます低下するに違いない。    
 

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