2019/10/28

パワハラ指針の素案

 
 今年の6月に成立したパワハラ防止法を踏まえ、法に示す文言の解釈や事業主の責務などを示した「職場におけるパワーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針」の素案が労政審に提示された。

 その中で注目されるのは、パワハラの代表的な言動について、6つの類型ごとに具体例を示したことである。

 たとえば、<暴行・傷害(身体的な攻撃)>については、
 
(該当すると考えられる例)
・殴打、足蹴りを行うこと。
・怪我をしかねない物を投げつけること。
(該当しないと考えられる例)
・誤ってぶつかる、物をぶつけてしまう等により怪我をさせること。

 と示されている。他にも、

<脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)>
<隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)>
<業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大 な要求)>
<業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)>
<私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)>

 のそれぞれについて、(該当すると考えられる例)(該当しないと考えられる例)を示した。これらの例は、限定列挙ではなく、あくまで具体例の1つということだ。
 一部に、ごく当たり前のものや、両者の区分が難しいもの(たとえば両方に適用可能など)もあるが、多様な職場状況において、どこで線引きをするかを文章で明確に示すのは困難であり、現時点では、概ね「その通り」という内容ではないかと思う。少なくとも、パワハラに該当するかどうか、そのイメージをつかむために前進したといえる。

 ただ、委員のうち使用者側は内容に賛意を示したが、労働側が強く反発しているとのことだ。10月22日の日経新聞では、「経営上の理由により、一時的に、能力に見合わない簡易な業務に就かせること」が「過小な要求」に該当しないとなっていることなどに対して、パワハラの定義が狭いとの意見が相次いだと報じている。
 また、日本労働弁護団は、「『該当しない例』が極めて不適当」など素案には重大な問題があるとして、抜本的な修正を求める声明を出している。
 
 分科会から労政審に提案された事項はすんなりと通るのが通例だが、強い反対があったものは審議が難航したり、場合によっては審議ストップとなったりすることもある。厚労省は年内の策定を目指すようだが、非常に不透明な状況で、場合によっては大幅な見直しがあるのかもしれない。  
 

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