2019/9/15

資格等級の3類型とその特徴

 資格等級は、一定の基準により社員を格付け・区分するもので、社員の処遇の根幹となる。資格等級に応じて人事評価、能力開発を行い、報酬にも結び付けるので、何を基準に等級を組み立てるか、つまり「〇〇等級制度」あるいは「〇〇資格等級制度」の〇〇に当たる部分をどうするかは重要なポイントである。今回は、資格等級制度の類型と特徴を整理してみたい。

 資格等級制度には主に次の3類型がある。
 
1.職能資格等級制度(能力等級制度)
・職務遂行能力(あるいは単純に能力)の高さを基準に社員を格付ける制度
2.役割等級制度
・果たしている役割の大きさを基準に社員を格付ける制度
3.職務等級制度
・就いている職務の価値を基準に社員を格付ける制度

それぞれの特徴を6つの観点から説明しよう。

(1)成果重視性
 成果主義との関係でいえば、最も成果重視といえるのは職務等級である。職務等級の下では、職務によって賃金が異なる。大きな成果を上げることで、より価値の高い職務(=高報酬の職務)に就くことができるという発想である。逆に、成果を上げられなければ、より賃金の低い職務を余儀なくされる。

 





(2)人件費

 したがって人件費の面からは、職務等級は成果に応じた分配が可能となるので、比較的低くて済む。一方、職能等級は能力の向上(多くの場合年齢に比例)とともに高賃金となるものの、能力はそう簡単には衰えない(あるいは衰えたと判定しづらい)ため、降給は困難であり、人件費は高くなりがちである。

 

(3)運用の柔軟性

 日本の企業は、社員にさまざまな職務を経験させるのが一般的であるが、職務等級だと異動によって賃金が変わってしまい、社員の納得を得られにくい。この点が職務等級の最大のデメリットである。一方、役割等級の場合は、職務等級ほどの硬直性はなく、職能等級は異動による賃金の変更はないため、運用の柔軟性は高い。



(4)基準の明確性

 等級基準がわかりやすいかどうかである。職務等級は、具体的な職務ごとに等級が決められるので明確性は高い。役割等級は、職務に比べてあいまいとなるので明確性は少し低くなる。職能等級は、能力という漠然としたものが基準となるので、さらに明確性は低くなる。



(5)メンテナンス容易性

 見方を変えると、そのような明確性を維持するために、職務等級はメンテナンスに手間がかかる。組織変更により新たな職務が発生すれば、その職務の等級づけが必要となるし、既存の職務であっても、報酬と直結するだけに定期的な見直しが求めれらる。職能等級では、能力というあいまいなもののおかげで、融通が利くため、メンテナンスの必要性はそれほどない。



(6)時代適合性

 最後に、時代適合性の面からは、職種限定の働き方の増加や同一労働同一賃金の浸透、グローバル経営の進展(世界的には職務給が主流)などから、職務等級が最も適合しているといえる。ただし、これは規模や業種、社風や経営哲学等による違いが大きく、中小企業や伝統的な業種、家族主義的経営を重視する会社などでは能力等級がまだまだ親和性が高そうである。また、成果主義を目指すにしても、先に述べた運用の硬直性から、職務等級よりも役割等級の方が人気があるといえる。

 
 

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