重本コンサルティングオフィス
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2019/7/1

転勤したくない人が増えている

 
 先般、大手化学メーカーの育休復帰者への転勤命令をめぐって、会社の対応の仕方に非難が集まった。
 おそらく10年前であればこのような事態にはならなかったはずだ。SNSが普及していなかったこともあるが、そもそも、内心不満があったとしても「転勤はビジネスマンの定め」と本人そして家族も受け入れたのではないだろうか。
 大勢は大きく変わっていないと思うが、そのような考え方は徐々に薄れつつあるようだ。

 産能大学が2019年度に社会人となった新入社員を対象に行った「2019年度 新入社員の会社生活調査(第30回)」では、「一度も転勤せずに同じ場所で働き続けたい」とする回答が36.4%で、昨年度よりも9.4ポイントと大幅に増加したとのことだ。

 詳細を見ると、男性の32.0%、女性の44.6%がそう答えた。ちなみに他の回答は以下のとおりだ。

・転居の有無、期間に関係なく転勤してもよい 21.6%(昨年度比2Pダウン)
・転居を伴わないのであれば転勤してもよい 18.3%(昨年度比2.2Pダウン)
・転居を伴う場合でも期間が限定されていれば転勤してもよい 23.7%(昨年度比5.1Pダウン)

 経営者や採用担当者と話をしていても、転勤を望まない学生や地元志向の強い学生が以前よりも増えているとの声を聞く。中小企業は転勤がないことが多いため、それが数少ないアピールポイントとなっているともいう。

 背景には、個人の私生活を大切にする働き方が重視されるようになってきたことに加え、安定志向が強まったこと(ただでさえストレスが多い中で、余計なストレスを抱えたくない)があるのではないかと思う。

 2019年5月13日の日経新聞に、慶大の鶴光太郎教授による転勤経験者と非経験者との比較分析の論稿が掲載されていた。それによると、転勤経験者は職務遂行能力が高いことや課長以上の昇進確率が高いこと、賃金も高いことが有意に実証されたとのことだ。転勤のメリットとして、新たな人脈づくり、他部署・他部門との連携強化、多様で幅広い視点の養成などが挙げられており、これらが要因になったことがうかがえる。

 これまでの「転勤は当たり前」という考えから、企業は脱却する時期を迎えている。対応として、まずは転勤そのものを減らすことが重要となるだろう。そのためには、「3年経ったら必ず異動」と無思考で転勤させるのではなく、必要性をしっかりと検討する必要がある。不要不急の転勤は廃止するということだ。

 もう1つ、転勤対象者にその必要性や意味を事前に説明することも求められる。その際、上記の転勤の効果やメリットを示すのもよいだろう。また、場合によっては、転勤者に手当を支給するなど経済的なインセンティブも考えるべきだろう。

 自由に転勤命令を出せる時代ではなくなりつつあることを、企業は認識すべきである。
 

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