2019/4/29

被評価者の心がまえ

 人事評価は社員の処遇に大きな影響を与える。評価に関わる者は、その重責を担っているとの心がまえで臨まなければならない。
 これは評価者には当然のことながら、被評価者にもぜひ理解してほしいことである。なぜなら、かつての査定目的だけの評価と違い、能力開発を最大目的とする現代の評価制度においては、評価者(上司)と被評価者(部下)とが協力し合って評価活動を進めるという姿勢が重要となるからだ。部下にも被評価者としての“心がまえ”が求められるのだ。

 では、被評価者の心がまえとして意識しておきたいものは何か? 筆者が考えるのは次の3つである。

(1)目的を正しく理解すること
 人事評価には、報酬査定、昇級昇格、適材適所といった目的もあるが、最大の目的は人材育成にある。評価によって現在のレベルを測り、今後の目標や課題を明らかにすることである。被評価者としては、自己の成長のためという認識を持つことが重要だ。これをたとえば、「人事評価は自分たちを選別し、出来の悪い社員を排除するためにある」というような誤った認識を持てば、その段階で制度は機能しなくなる。

(2)自己成長のために積極的に関わること
 それでは、被評価者として自己成長につなげるためには、どのような姿勢が必要かといえば、受け身にならず、制度を自分を成長させるツールととらえ活用することである。評価は管理職の仕事であって自分には関係ないものと思わないでほしい。その意味で“被”評価者という言葉は、どうも受動的なイメージがあり適切でない。被害を受けるといったネガティブな印象も想起させる。気持ちとしては“被”評価者ではなく“利”評価者、つまり評価を利用する、活用するという姿勢を持ちたいものだ。

(3)評価者(上司)とのコミュニケーションを重視すること
 評価に積極的に関わるために意識してほしいのは、評価制度を機会に上司とのコミュニケーションをこれまで以上に増やすことである。その手段として、評価制度の中に目標設定や評価フィードバックなどの面談制度を組み込んでいる企業も多いと思うが、それにとどまらず、日常的な報連相を通じて、自分の考えを理解してもらうと同時に、上司の考えも理解するという双方向の対話を意識的に実践してほしい。忙しい中、上司とのコミュニケーションなんか時間のムダ、と考えるようでは適切な評価は難しいし、何より被評価者自身の成長にもならない。

 (1)はともかく、(2)(3)は被評価者だけでなく評価者の方でも同様の心がまえを持たなければ、うまくいかないのは確かである。
 ただ、日ごろ評価者研修等を通じて感じるのは、評価者の部下育成意識の高さである。時間が取れなかったり、スキルが不足していたりして、実際の育成につながっていない面はあるにしても、大半の上司は部下の成長を強く願っている。被評価者もその気持ちをくみ取り、まずは上記3つの心がまえをもって評価に臨んでほしいものだ。
 評価制度を活用して、よりよい仕事、さらなる能力向上を目指せば、結果として、よりよい評価につながるはずである。
 

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