2018/11/5

学校教職員の長時間労働

 
 トラックの運転手やシステムエンジニア、外食店スタッフなど、長時間労働で知られる業種・職種はいくつかあるが、最近、クローズアップされているのは学校教職員である。

 先日公表された「平成30年版過労死等防止対策白書」では、教職員アンケートを通じて、その実態が報告されていた。以下、内容を確認してみよう。まずは労働時間である。

・通常期における平日1日の実勤務時間は、「10 時間超12 時間以下」(50.2%)が最も多く、次いで「12 時間超14 時間以下」(24.1%)、「8時間超10 時間以下」(20.9%) であった。
・全体の平均実勤務時間は11 時間17 分であった。

 平成29年の一般労働者(=常用労働者からパートタイム労働者を除いた者)の年間総実労働時間は2,026時間である。年間休日を120日とすると労働日は245日となり、1日当たりの労働時間は約8.3時間となる。労働者平均と比べて教職員の労働時間の長さがよくわかる。なお、上記は通常期であり、繁忙期の平均実勤務時間は12 時間56 分にのぼる。

・職名別に通常期における平日1日の実勤務時間が10 時間超の割合をみると、「副校長・ 教頭」(94.8%)が最も多く、次いで「主幹教諭」(89.2%)、「教諭(指導教諭を含む)」 (84.2%)の順となっている。
・平均勤務時間も「副校長・教頭」(12 時間33 分)が最も長く、次いで「主幹教諭」(11 時間47 分)、「教諭(指導教諭を含む)」(11 時間30 分)の順となっている。

 ちなみに校長は10時間53分で、養護教諭、栄養教諭、事務職員はさら短い。これらが全体平均の押し下げ要因となっている。

 なぜ、長時間労働となるのか、所定勤務時間を超えて業務を行う理由として以下のものが上位に挙げられている。

①「自身が行わなければならない業務量が多いため」(69.6%)
②「予定外の業務が突発的に発生するため」(53.7%)
③「業務の特性上、その時間帯でないと行えない業務があるため」(48.9%)
④「締切や納期が短い業務があるため」(30.7%)
⑤「自身が業務の質を高めようとしているため」(28.2%)

 一般企業でも同様の理由が挙げられると思うが、多数の子どもの指導という業務特性から、特に②③は主要な理由になると考えられる。また、以前、教職員の方に「学校の先生というのはクラスの経営者であり、自営業主という意識が強い」とうかがったことがある。いい悪いは別にして、この辺りは①に関係しそうである。

 このような状況下では当然にストレスもあるだろう。業務に関連するストレスや悩みの内容は以下の通りだ。

①「長時間勤務の多さ」(43.4%)
②「職場の人間関係」(40.2%)
③「保護者・PTA 等への対応」(38.3%)
④「学校や児童・生徒を取り巻く環境」(31.1%)
⑤「休日・休暇の少なさ」(28.6%)

 ③は、「顧客、消費者等への対応」と読み替えれば、そのまま企業にも当てはまる。なお、過重労働の要因と考えられている「部活動の指導」は14.5%であり、それほど高くない。指導そのものは大きなストレッサ―ではないということだ。

 さて、これらにどう対応するか、過重勤務防止に向けて必要だと感じる取組みを見ると、

①「教員(専科教員を含む)の増員」(78.5%)
②「学校行事の見直し」(54.4%)
③「教員同士のコミュニケーション円滑化」(43.1%)
④校内会議時間の短縮(38.8%)
⑤管理職から教員への積極的な声掛け(37.9%)

 となっている。③は、先に述べた教職員の「自営業主」意識の強さから、職員間で意思疎通が不足し非効率が生じているということだろうか。

 筆者の認識では、学校組織の大きな特徴は、上位者によるマネジメント・コントロールの度合いが低いということである。現場の先生たちは管理されることに慣れていないし、管理を嫌がる。その裏返しで、校長や教頭も管理することに慣れておらず、不得意である。こういった特徴は労働時間管理にも影響しているはずである。

 見方を変えると、適切なマネジメントにより、労働時間短縮の余地は大いに期待できるということだ。「自営業主」のよいところを残しながら、いや、その特性をもっと発揮できるようにするために、時短に取り組んでほしいものである。


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