2024/11/3

男性育休の現状

 現在、育児介護休業法では1000人超の企業に対し、男性労働者の育児休業の取得状況の公表を義務づけているが、2025年4月から対象企業が300人超に引き下げられる。また、夫婦で育休を取得すれば手取り10割を支給する「出生後休業支援給付」も2025年度から開始となる。

 このように国としても男性の育児休業取得には大きな関心を払っているわけだが、その現状はどうなっているだろうか。10月17日に発表された明治安田生命保険の「子育てに関するアンケート調査」結果を概観してみよう。

 まず、男性の育休取得率は33.4%、取得日数は平均42日と過去最高を更新している。もっとも、大企業の男性が51.6%に対し、中小企業は26.2%と企業規模によって大きな格差がある。取得日数も6割弱が1か月未満で、半年以上は6%と少ない。

 理想どおり育休を取得できなかった理由として挙げられたのは、「金銭面で取得しにくかった」(29.7%)が他を引き離してのトップで、以下、「長期職場を離れ、仕事のスキル・経験に支障がでるため」(17.1%)、「長期職場を離れ、職場に戻る際の周囲の雰囲気に不安がある」(15.0%)、「利⽤するための職場の理解が不⾜している」(14.3%)と続いている。経済面やスキル面の心配に加えて、周囲の目が取りづらい要因になっていることがわかる。

 2022年4月から、妊娠・出産の申し出をした労働者に対して、育休の周知・意向確認をすることが義務づけられているが、中小企業に勤める男性の59.1%、大企業の男性でも45.2%が会社から育休取得について説明がないと回答している。

 説明内容も、「周囲の雰囲気をみて取得⽇数を決めるようにいわれた」「1⽇だけでも取得するようにいわれた」が「⾃分の希望を聞きつつ、取得⽇数について相談できた」を上回るなど、会社が積極的でない様子がうかがえる。

 育休取得後に職場で「気まずい」と感じた男性は41.5%となっており、何らか後ろめたさを感じる社員が多いことがわかる。

 気まずさを感じないためにあったら良いと思う制度としては、「人員の補充」(24.7%)、「育休取得の義務化」(23.4%)、「同僚への応援手当」(23.4%)の指摘が多い。

 このうち、「育休取得の義務化」は法的には難しいと思うが、企業独自で実施しているところもある。大東建託では、2018年から男性社員の5日間の育休取得を義務化している。

 「同僚への応援手当」は、厚生労働省の助成金(「両立支援等助成金」)もあり、導入企業が相次いでいる。ちなみに応援手当に対応する「育休中等業務代替支援コース」の令和7年度要求予算額は266.3億円で、前年の87.8億円から3倍増となっている。国も応援手当の“応援”に積極的な姿勢を示している。

 気兼ねなく育休を取得してもらうには、応援手当の支給が現状では最適な方法と思われる。女性の取得は周囲も当たり前と受け止めるが、男性の場合はまだまだ違和感を覚えるのが多くの職場の現状だろう。応援手当を支給するかどうかはともかく、何らか仕組みを変えることで、職場の意識も変えたいものだ。      

 


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