経団連が2022年に発表した「副業・兼業に関するアンケート調査結果」では、回答企業の7割が副業・兼業を容認している(「認めている」53.1%、「認める予定」17.5%)。また、2023年のデューダの「副業の実態調査」では、「今、副業をしている」人が8.4%となっている。他社の調査を見ても同様の数値で、社員の1割くらいは現に副業をしているのが実態のようだ。
副業が当たり前になりつつあるのは事実だろう。ところで、副業というと本業とは別の会社で働いたり、仕事を請け負ったりすることをイメージするが、次のようなケースはどうなのだろうか?
・ユーチューブで趣味の動画を提供しているが、結構な広告収入になっている。
・亡くなった両親の実家を賃貸して収入を得ている。
・メルカリで古着やバッグを売ってこずかいを稼いでいる。
仕事というよりは、趣味や資産運用に近いものだが、本業以外に収入を得るという観点でみると、「これって副業になるのでは?」と迷うこともあるのではないかと思う。
会社の就業規則では、
「会社の許可なく、法人その他の団体の役員に就任し、または他に雇用され、若しくは自ら営利を目的とする業務を行わないこと」
あるいは、
「労働者が就業時間外において、他の会社に雇用され、役員に就任し、あるいは自身で事業を経営する場合には、以下の方法により会社に事前に申請し、会社の許可を得なければならない」
などとなっている例が多いと思う。
ポイントなるのは「営利を目的」「事業を経営」という文言、つまり営利性や事業性があるかどうかだろう。
その線引きは法で決まっているわけではないので、各企業の判断に委ねられるが、何か基準になるものはないだろうか。
参考になりそうなのが、6月に人事院から公表された「一般職の国家公務員の兼業について(Q&A集)」である。先ほど示した事例など、10のQAをまとめている。
たとえば、ユーチューブに関しては、「基本的に、アフィリエイト収入を得ることだけをもって兼業には該当しません。しかしながら、営利目的や投稿の継続性・反復性の有無、規模(主には収入額)等によっては承認又は許可が必要な兼業に該当する可能性があります」と回答されている。
あいまいといえばあいまいだが、一定の基準にはなるだろう。ちなみに不動産や駐車場の賃貸に関しては、数値など細かな基準がある。おそらく、これに関しては先例がたくさんあり、基準が確立されているのではないかと思う。
今後、本業以外の収入獲得手段として、QAで挙げられたようなものが増えることが予想される。単発的にやるだけであれば問題はないが、中には恒常的に、さらには本業そっちのけで取り組む者がいるかもしれない。
別の会社で働くのであれば副業・兼業という意識は強いが、QAのようなケースは意識が希薄になりがちだろう。ただ、会社として放置してよいわけでもない。QAを参考に注意を促すのもよいと思う。中には副業に該当しないかと不安に思っている社員もいるはずだ。そのような社員のモヤモヤ感を払拭するためにも有効といえる。