2023/9/24

裁量労働の「時間配分の決定」

 裁量労働は、業務遂行の手段や時間配分の決定等に関し、使用者が具体的な指示をせずに労働者に委ねるものだ(労働基準法第38条の3)。

 ここで「時間配分の決定」というのは、次の2つの考え方がある。
①労働者は、会社が定めた始業・終業の時刻の枠内で時間配分を決定する。つまり、会社は裁量労働者の就業可能(禁止)時間を設定することができる。
②労働者は、始業・終業時刻も含め時間配分を決定する。つまり、会社は裁量労働者の就業可能(禁止)時間を設定することはできない。

 ①はたとえば、通常労働者の所定労働時間が9時~18時の場合に、裁量労働適用者は7時~22時の範囲内で労働する、といったルールを設けるケースである。実際にこのような会社もある。

 ②は、所定労働時間にかかわらず、裁量労働適用者が始業・終業の時間を自由に決められるものだ。極端な例を言えば、「自分は夜型なので20時頃から明け方まで働く」というのを認めるケースである。

 どちらの考え方に基づく運用が適切なのだろうか? 今般の裁量労働制の改正に伴って発出された通達(「令和2年8月2日基発0802第7号」)では、「時間配分の決定」について次のように述べている。

 『法第 38 条の3第1項第1号及び第3号に規定する「時間配分の決定」には、始業及び終業の時刻の決定も含まれるため、使用者から始業又は終業の時刻のいずれか一方でも指示される業務は裁量労働制の対象業務に該当しないものであること』

 一読する限り、いつ働くかは社員の自由ということになり、②が適切と言えそうだ。もっとも、会社は就業可能時間を設定するだけであって、始業・終業の時刻の指示をするわけでないという理屈で、①もOKと考えることもできる。

 実際、上記の例で挙げたような社員がいると、24時間事務所を開けておかなければならないケースも出てくる。裁量労働であっても深夜割増賃金は支給されるため、深夜に働いた方がトクと考える社員もいるはずだ。

 そのような事態に備えて、常識の範囲内、たとえば22時~5時は就業不可とする取り扱いはできるのだろうか。通達とともにQA(「令和5年改正労働基準法施行規則等に係る裁量労働制に関するQ&A」)も出されているが、残念ながらこの点に関するものはない。

 これについて筆者は、取り扱いは可能と考える。保安上の問題や光熱費等の問題、社員の健康管理面などから、就業時間に一定の制限を設けるのは企業として合理性があるからだ。

 通達では健康・福祉確保措置として、深夜労働をさせる回数は1箇月について一定回数以内とすることを労使協定や労使委員会に求めており、正当な理由があれば、就業時間に何らかの制限を加えることは認められると理解できる。

 労使あるいは労使委員会の話し合いの下、当該企業で一般に認められる時間外労働の範囲内で就業可能(禁止)時間を設けるのは妥当ということだ。  

 


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