副業・兼業については、2017年に政府が働き方改革実現計画において「原則副業・兼業を認める方向で、副業・兼業を普及促進」と盛り込んだことから、広がりを見せ始めた。それから5年、現状はどうなっているだろうか。
経団連が10月11日に公表した「副業・兼業に関するアンケ―ト調査結果」によると、社外での副業・兼業を認めているのは、企業規模計で53.1%と半数を超えている。
もっとも企業規模によってかなり差異があり、5,000人以上規模では66.7%、100人未満は31.6%と規模が小さくなるにつれ、容認は少なくなる。
業種別でも大きく異なり、「認めている」が高いのは不動産業(85.7%)、金融・保険業(76.0%)で、低いのは鉱業(0%)、サービス業(34.8%)、商業(卸売・小売業)(41.4%)である。
金融・保険業はお堅いイメージもあって、副業禁止が多いかと思っていたがそうでもないようだ。一方でイメージ的には、ITスキルを活用し在宅で副業を行えそうな情報通信業は53.3%とそれほど高くはない。サービス業や商業が低いのは、先述の規模による影響がありそうだ。
副業・兼業の効果(3つまで回答)については、「多様な働き方へのニーズの尊重」(43.2%)と「自律的なキャリア形成」(39.0%)の2つが、他を大きく引き離している。以下、「本業で活用できる知識・スキルの習得」(18.5%)、「人材の定着」(13.7%)、「セカンドライフへの関心の高まり」(13.0%)が続く。
直接本業に役立てるというよりは、社員の働き方やキャリアなどのニーズに応えるための制度であることがうかがえる。中小企業が消極的なのは、そこまでの余裕がないことの現れかもしれない。
なお、「特に効果は出ていない」が22.6%と結構な数値であることにも留意したい。現状、副業・兼業に懐疑的な視線も一定割合あるといえるだろう。
さて、本調査では、社外からの副業・兼業の受け入れについても調査を行っている。結果は、企業規模計で「認めている」(16.4%)、「認める予定」(13.8%)、「検討していない」(61.8%)、「認める予定はない」(8.0%)となっている。
受け入れについては未検討が多く、副業・兼業が「送り出し」の段階にとどまっていることがわかる。ただ、300人未満では、「認めている」が24.4%となっており、中小企業では、経営資源を補完するものとして活用が期待されている。
副業・兼業といってもその態様は様々である。従来は、本業での収入を補完するためにやるものが多かったと思うが、最近では、誰かの役に立ちたい、あるいはスキルを高めたいとの理由で取り組む人も増えている。実際、副業・兼業に熱心なのは、高収入者と低収入者の両極端に分かれているという話も聞く。
ともあれ、『副業・兼業を禁止、一律許可制にしている企業は、副業・兼業が自社での業務に支障をもたらすものかどうかを今一度精査したうえで、そのような事情がなければ、労働時間以外の時間については、労働者の希望に応じて、原則、副業・兼業を認める方向で検討することが求められる(厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」)』というのが国の考え方である。副業・兼業の禁止を法規制することはあるまいが、認めないのは“ブラック”と世間から判断される日も近づいていると言えそうだ。