2022/6/19

従業員持株制度とは

 従業員持株制度は、持株会を通じて、社員が自社株を積み立て購入していく制度である。持株会に加入した社員は、自分で設定した一定額を給与・賞与から天引きしてもらい、持株会がそれを取りまとめ、自社株を購入していく仕組みである。

 東京証券取引所の「2020年度従業員持株会状況調査結果」(2021年3月31日時点)によると、導入企業は上場企業の86.5%である。もっとも、これは大手証券5社と契約のある企業だけなので、その他も含めれば、おそらく95%くらいになると思われる。つまり、ほとんどの上場企業では、従業員持株制度が導入されているということだ。

 従業員持株会の株式保有金額は6兆5,700億円で、調査対象会社全体の時価総額(714兆円)に占める割合は0.92%となる。構成比だけを見るとわずかのような気もするが、個人株主が大半を占める上場企業において、それなりの存在感を示している。

 持株会に加入する社員の割合は約40%で、加入者1人当たりの平均保有金額は、前年度比31%増の224万円という。結構な資産である。

 社員にとっての大きなメリットは、積立額の一定割合を、企業が奨励金として支給してくれることだ。たとえば、社員が毎月1万円を積み立てている場合、奨励金10%だと千円が上乗せされて、1万1千円分の自社株を購入できるわけである。

 奨励金については、東証の調査では、調査対象会社全体の96.5%で支給されている。平均支給額は積立額1,000円につき88.45円とのことだ。100円や50円とする会社が多いが、1,000円以上とする会社も7社あり、最高額は3,000円だそうだ。

 この会社では、1万円を拠出すれば4万円分の自社株を得られることになる。加入資格や拠出額の上限など種々の制限はあると思うが、社員にとっては何とも魅力的な制度である。加入者比率は100%近いのではないかと推察する。

 一方の企業側のメリットは、以下のものである。
・経営への参加意識の向上
・安定株主の獲得
・社員の資産形成の促進することによる満足度の向上

 こうして見るといいことずくめのようだが、もちろんデメリットもある。社員からすると、株主優待の権利がない、売却に時間がかかるなどがあるが、最大のリスクは、株価低迷による資産価値の減少で、最悪、倒産すれば価値がゼロになってしまうことである。企業からすると、その危機感を持ってほしいということで、まさに“経営への参加意識を高める”仕組みといえる。            

 


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