2022/6/12

労働組合は衰退していくのか

労働組合

 周知のように労働組合は長期的に衰退傾向にある。厚労省「令和3年労働組合基礎調査の概況」によれば、推定組織率(雇用者数に占める労働組合員数の割合)は16.9%で、前年より0.2ポイント低下している。年によっては増えることがあるものの、長期的に漸減傾向にあるのは間違いない。もっとも組合員数は、この15年間くらい約1千万人で下げ止まりしている。分母となる雇用者数が増えているため、組織率が下がっている状況である。

 労組の組織動向について、もう少しミクロの視点から確認してみよう。厚労省の2021年「労働組合活動等に関する実態調査」結果によると、3年前(2018年6月)と比べた組合員数の変化は、組合員数が「増加した」31.4%(2018年33.8%)、「変わらない」25.8%(同23.9%)、「減少した」42.7%(同42.1%)となっている。

 「増加した」から「減少した」をマイナスした数値の大きな業種を見ると、「電気・ガス・熱供給・水道業」-40.8ポイント、「金融業,保険業」-36.3ポイント、「複合サービス事業」-48.5ポイントである。

 企業規模別に見ても、「5,000人以上」の-21.1ポイントをはじめ、「500~999人」を除くすべての規模でマイナスとなっている。

 3年前と比べて組合員数が減少した理由(複数回答)として挙げられているのは、「定年退職」66.7%、「自己都合退職」65.0%、「正社員の採用の手控え」38.3%などとなっており、正社員の減少を補完できていない状況がうかがえる。

 このような状況に対して、当の組合が危機感を持っているかといえば、そうでもないようだ。組織拡大を重点課題として取り組んでいる労働組合の有無をみると、「取り組んでいる」26.7%(3年前29.6%)、「取り組んでいない」73.3%(3年前70.1%)となっており、組織拡大への熱意が低いことが見て取れる。

 取り組まない理由(複数回答)を見ると、「ほぼ十分な組織化が行われているため」54.7%、「組織が拡大する見込みが少ないため」27.3%、「他に取り組むべき重要課題があるため」16.9%などとなっており、危機感の少なさやあきらめ感がうかがえる。

 組織拡大の取組対象として特に重視している労働者の種類は、「新卒・中途採用の正社員」41.5%、「在籍する組合未加入の正社員」22.6%、「パートタイム労働者」13.6%の順で、「正社員志向」が強い。

 ただ、今後、正社員の飛躍的な増加は期待できず、組織拡大にはパートタイマーなど非正規社員の加入が必要となるのは間違いない。

 労働者の種類別の組合加入資格をみると、「パートタイム労働者」37.3%、「有期契約労働者」41.5%、「嘱託労働者」39.6%、「派遣労働者」6.6%と、軒並み低く、逆に言えば、加入の余地がまだ大きいことがわかる。

 たとえば賃金の見直しがあった際、労働組合がなければ、会社の提示する条件にそのまま従うことなる。組合があることで、社員にとってより望ましい条件が期待でき、実際そうなっているケースは多い。一方で、会社にとっても、労使協議などを通じて現場の意見を収集できたり、組合を通じて会社の方針・意図を現場に浸透できたりと、労働組合の存在意義は大きい。

 衰退傾向にあるのは確かとしても、その存在意義がなくなっているわけではない。いたずらに組織拡大をする必要はないが、衰退するままに、手をこまねいているのは労使双方に無益との気概を労働組合に持ってほしいものだ。            

 


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