2022/2/13

社内副業のすすめ

クロスジョブ制度

 本業とは別に副業を持つことで、能力・スキルのレベルアップ、視野の拡大、チャレンジ精神や自立心の向上などが期待できる。こういったメリットから、このところ副業を奨励する企業が増えている。

 とはいえ、一般的には、労務管理の複雑化や過労、機密情報の漏洩などの懸念があることや、まずは本業に専念してほしいとの要望から、副業は原則NGとする企業が大勢を占める。

 それでもこれからの時代、副業のメリットは捨てがたいということで、発想を変えて、社内で副業をするのはどうだろうか。”いわゆる副業”をせずに、副業のメリットを享受しようというわけである。

 社内副業は、「本業」となる所属部署を変えずに、他の部署の業務にも恒常的に従事する制度である。よくあるように、管理部門の社員が繁忙期に製造業務の手伝いをするとか、営業部門の社員が新システム構築のプロジェクトチームに加わるといった臨時的・一時的な業務形態ではなく、あくまで恒常的なものである。したがって、従事するのは会社に普通にある業務ということになる。

 事例を1つ紹介すると、システム開発・保守を行うインテリジェント・ウェイブでは、「クロスジョブ制度」という社内兼業の仕組みを導入している。概要は以下の通りだ。


・目的は、部門を超えてイノベーションに必要な知識・スキルを高める人財の育成
・社員の希望により申告(従来は会社命令)
・兼業の労働時間は20~30%が目安

 事例企業も踏まえて、社内副業の設計のポイントをまとめると次の4つである。

1.目的の明確化
 目的は大きく、①社員の専門性の深化、②ゼネラリストの育成、の2つに分けられる。今日の流れでは①の方が重要と見られるが、将来の経営者育成の観点からは②も重要である。また、専門分野を定めるために幅広い経験を積むという意味でも②は有効である。

2.従事する業務
 ポイントは現在の業務との関連の有無で、①関連ありは、専門性を深める効果があり、副業のメリット「能力・スキルのレベルアップ」につながる。一方で②関連無しは、ゼネラリスト育成の効果があり、「視野の拡大」「チャレンジ精神や自立心の向上」につながる。
 いずれも部門を超えた人材交流に寄与するが、②の方が普段接しない人、違うタイプの人と交流が深まるだろう。縦割り組織の打破といった課題があれば、②が適切である。

3.対象者の選定
 ポイントは、①社員の希望か、②会社命令かである。事例企業は、当初は会社命令だったが、希望制に変えている。①であっても、希望が必ずかなえられるわけではなく、副業先の承諾は必要とすべきだろう。現所属部署の承諾については、原則、不要とするのが妥当と思う。
 希望制の場合は、これまで経験のある業務でも可とするか、不可とするかも検討しておく必要がある。制度の目的にもよるが、一律不可とするのではなく、希望の理由によって判断するなど、柔軟な仕組みとしておくのがよいだろう。
 本来の副業の趣旨からして理想は①の希望制だが、希望者が出ずにせっかく作った制度がお蔵入りしてしまう可能性もある。そのため、まずは会社から辞令を出して副業をしてもらうのが適切とも考えられる。業種や社風、社員の特性に応じた対応を考えたい。

4.副業の割合
 事例にもあるように、本業の2~3割が目安となる。労働時間の分け方は、業務の特性にもよるが、基本は1日あるいは半日単位で分けるのが妥当だろう。たとえば、毎週金曜日、あるいは木曜日の午後から金曜日は、副業部署で仕事をするといったイメージである。

 以上、社内副業のポイントを整理してみた。社員の自律的なキャリアプランを支援する仕組みとして社内FA制度が代表的だが、社内副業も一考に値する制度ではないかと思う。            

 


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