ジョブ型雇用が脚光を浴び、有名企業での導入が相次いでいる。先日もオリンパスが一般社員への導入を目指すとの新聞記事を見かけた。
ところで、社員はジョブ型雇用を望んでいるのだろうか? 今回はその視点から考えてみたい。導入企業の大半は、社員の意向にかかわらず、会社やトップのニーズで導入を決めたと思う。ただ、導入後にうまく機能するかは社員に受け入れの素地の有無に大きく関わる。導入過程で労使協議や社員説明をしていくのは当然として、そもそも社員はどう考えているかを認識しておくのは有用だろう。
これについて、10月21日に公表された日本生産性本部の第7回「働く人の意識調査」によると、ジョブ型(仕事内容や勤務条件を優先し、同じ勤め先にはこだわらない働き方)を希望するのは64.9%、メンバーシップ型(同じ勤め先で長く働き、異動や転勤の命令があった場合は受け入れる働き方)を希望するのは35.1%となっており、3分の2はジョブ型を望んでいることがわかる。
もっとも企業規模による違いはあり、従業員100名以下69.1%、101~1000名以下68.8%に対して、1001名以上は47.3%と、大企業で低い傾向が見られる。これについて生産性本部では、「中小企業・中堅企業は、大企業と比較して雇用者の流動性が高いため、ジョブ型のキャリア観の方が現実的と受け止められている」からではないかと指摘している。
確かに、自分の望む仕事ではない、あるいはさらにステップアップしたいときは別の企業に移るという意識は、中小・中堅の労働者のほうが高いだろう。ジョブ型の質問が「同じ勤め先にはこだわらない働き方」となっているため、大企業の社員はそこに引っかかりを覚え、メンバーシップ型を選択した可能性はある。
このように規模による違いはあるものの、社員の志向はジョブ型が優勢を占める。ただ、調査はごくおおざっぱな質問で行われているので、ジョブ型・メンバーシップ型について深く理解をしたうえでの回答ではないだろう。たとえば、「雇用契約上の職務が無くなれば原則解雇となる」といった内容で質問をすれば、ジョブ型はもっと減る可能性はある。
それを差し引いても、社員側のジョブ型ニーズは結構高いという印象である。逆に言えば、終身雇用を前提に異動や転勤を受け入れてきたメンバーシップ型への信頼が薄れていることの裏返しかもしれない。
調査では、仕事の内容、勤務地、勤務時間を限定できる働き方が可能な場合、どの条件の重要度が高いかについても質問している。結果は、仕事の内容(42.3%)、勤務地の限定(33.6%)、勤務時間の限定(24.1%)という順番となっている。順番は予想通りだが、仕事の内容が4割程度と少ないのが意外である。勤務地限定との差は10ポイント未満で、勤務地の重要性をあらためて確認できる。
ジョブ型を志向する社員のうち、真のニーズは勤務地限定にある者も多いことがうかがえる。「勤務地限定」でジョブは変更の可能性ありという働き方も、有効な選択肢になると考えられる。