2021/3/28

テレワークでの長時間労働対策

テレワークでの長時間労働対策
 
 テレワークには様々なメリットがある一方で、長時間労働に陥ってしまうデメリットも懸念される。国土交通省の2020年度「テレワーク人口実態調査」結果によれば、テレワークを実施して悪かった点は、「仕事に支障が生じる(コミュニケーションのとりづらさや業務効率低下など)、勤務時間が長くなるなど、勤務状況が厳しくなった」が約47%で、最も高くなったという。

 今後、テレワークが常態化していくなかで、長時間労働対策は重要な課題になると考えられる。これに関し、厚生労働省が3月25日に公表した「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」では、テレワークにおける長時間労働等を防ぐ手法として、次の5つを挙げている。

①メール送付の抑制等
②システムへのアクセス制限
③時間外・休日・所定外深夜労働についての手続
④長時間労働等を行う労働者への注意喚起
⑤その他

 各々、内容や効果について整理してみよう。

 ①は、時間外等に業務に関する指示や報告を自粛・禁止させるものである。勤務時間外のメールというのは、特に急ぎのものではなくても、ついつい気になってしまうものだ。特に上司からのメールを放置するのは難しい。このため、送る側に他意はなくても、受け取る側の負担となるケースが多い。これは万国共通の課題のようで、2017年にフランスで勤務時間外の「つながらない権利」が法制化されたのをはじめ、2021年1月に欧州議会で法制化を求める議案が採択されている。

 ②は、勤務時間外は原則として、企業の社内システムに外部からアクセスできないようにするものだ。どうしても必要な場合は、事前に許可を得ることになる。①よりもさらに強力な手段といえる。

 ③は、通常のオフィス勤務の場合と同様に時間外労働等をする際の手続きを明確化しておくことだ。もっとも、オフィス勤務での手続きが機能している場合は有効だろうが、形骸化しているのなら、効果は望めないかもしれない。

 ④は、長時間労働が一定限度を超えた社員や恒常化している社員に会社から警告を送るものだ。システムに組み込まれている場合も多いだろう。これも③と同じく、オフィス勤務でも同様の仕組みがある場合に機能しているかが問題となる。

 ⑤のその他として具体的に挙げられているのは勤務間インターバル制度である。一定の効果は期待できるだろうが、オフィス勤務と違って出勤・退勤を伴わないだけにON-OFFのメリハリがつけづらいのが難点といえる。

 こう見ると、③④⑤については、基本的に社員が仕事をしようと思えばできるので、どうしても長時間労働をする人はする、ということになりそうだ。もちろん、「長時間労働に気をつけましょう」というアナウンス効果はあるだろうが。

 実際に効果が見込めるのは、物理的に遮断を行う①②と考えられる。特に②は、仕事をしたくてもできなくするという意味で高効果が期待できる。ただ、機械的なシャットアウトは副作用も懸念され、実際に実施するとなれば、なかなか決断がつかないかもしれない。

 一方で①はルールを決めるだけなので、会社の規模や社内システムの状況にかかわらず簡単に実施できる。いきなり時間外の送信禁止が難しいのなら、たとえば、20時以降は禁止でもよい。まず、できそうなことから始めてみてはいかがだろうか。     
 

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