2020/5/5

執行役員とは~その2

 執行役員について、今回は導入にあたってのポイントを確認する。

 制度設計時に確認しておきたいのは、執行役員の会社法上の地位だ。

 執行役員自体は会社法上の制度ではないので、その内容は原則自由に決められる。
 ただし、取締役執行役員は、業務執行権限を与えられた取締役と位置づけられるので、「3か月に1回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならない(会社法363条2項)」。
 従業員執行役員は、「事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人(会社法14条)」に該当するため、その担当部門や担当職務の業務執行事項について包括的な代理権限を持つことになる。また、重要な使用人となるので、その選任・解任は取締役会決議が必要である。

 続いて、導入のメリットとデメリットを確認しておこう。

 まず、主なメリットは以下の3つだ。
①取締役の役割分担(特に業務執行取締役の役割)が明確化する
②社員の責任意識の高まりやモチベーションの向上が期待できる
③役員候補者のトレーニングの場になるとともに、適性の見極めができる

 一方、デメリットは次の3つだ。
①役割・権限が明確でないと、“飾り”の役職になる可能性がある
②担当取締役と執行役員が存在すると指揮系統が複雑になる
③執行役員の処遇のための制度設計が必要となり、人事制度が複雑化する

 制度設計にあたっては、上記のメリットを生かすとともに、デメリットを減らすよう意識しなければならない。たとえば、デメリット③に関しては、従業員執行役員は基本的に一般社員と同じ人事制度を適用するなどである。

 最後に、制度導入の際の主要な検討事項を、取締役執行役員と従業員執行役員に分けて指摘しておきたい。

(1)取締役執行役員
①対象者をどうするか?
 常勤取締役全員を執行役員とするか、一部の者を対象とするかだ。後者の場合、執行役員とならない取締役は、前回指摘した取締役(会)の機能のうちの意思決定機能と監督機能を担うことになる。
②社長も執行役員とするか?
 本来、代表取締役には業務執行権限がある(会社法363条)ので、わざわざ任じなくてもよいのだが、執行役員の肩書を付すことで、他の業務執行取締役と並んで会社の執行側の人間であることを表明する意味がある。
③名称(肩書)はどうするか?
 社長の場合は、「代表取締役社長執行役員」「代表取締役執行役員社長」などだ。専務(常務)の場合は、「専務(常務)取締役執行役員」「取締役専務(常務)執行役員」「取締役執行役員専務」などだ。取締役は、「取締役執行役員」または「執行役員取締役」のいずれかだろう。

(2)従業員執行役員
①雇用型と委任型のどちらにするか?
 雇用型は従業員の地位を維持したままで執行役員を任じるものだ。一方、委任型は役員就任の場合と同様に、社員にいったん退職してもらい、委任契約を結ぶ形となる。雇用型の場合は、労働者なので労働基準法等の労働諸法令が適用される。
②報酬体系
 雇用型の場合は、一般社員の賃金体系と同様にするか、それとも年俸制等の別途枠組みにするかの選択がある。委任型の場合は、役員報酬と同様に委任報酬となる。
③評価制度
 一般社員と同様の評価制度にするか、それとも別途仕組みを設けるかである。後者の場合、精緻な仕組みとするのではなく、役員が人物評価のような形で適宜評価するケースも多い。    
 

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