2020/1/13
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派遣先均等・均衡方式に関するQ&A |
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昨年末、厚生労働省から派遣社員の同一労働同一賃金に関し、「派遣先均等・均衡方式に関するQ&A」が公表された。「比較対象労働者の待遇等に関する情報の提供」「派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇の確保のための措置」「待遇に関する事項等の説明」「福利厚生施設、就業環境の確保等」という4つのテーマで、計20のQ&Aを掲載している。
Q&Aを見てあらためて思うのは、派遣先均等・均衡方式の難しさだ。たとえば、「比較対象労働者の待遇等に関する情報の提供」の中の、
に対して、 「個人が特定されないよう、労働者の標準的なモデルとしての待遇情報を提供すること等の配慮を行うことが望ましい」 とあるが、規模の小さな企業が“標準モデル”を提供しても、実態を見れば誰の賃金か一目瞭然のケースは多いだろう。結局は、「一定の個人に特定される可能性のある比較対象労働者に関する情報を提供する場合」に該当し、本人への説明や同意が求められることになる。 ただ、「比較対象労働者の待遇等に関する情報の提供」は、派遣先の協力が得られれば、まだ対応はできる。それよりも問題となるのが、「派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇の確保のための措置」だ。たとえば、次の退職金などは典型例で、
と労使間の話し合いに委ね、判断を放棄しているように見受けられる。 一般的に、退職金が支給されるのは勤続3年以上というケースが多いが、3年ルールのある派遣社員の多くは退職金の支給がなくてよいという解釈になるのか。ただ、中退共は勤続1年でも支給されるので、派遣先が中退共に加入していれば何らかの退職金がもらえるのか。そういった点の例示がほしいところだ。 また、派遣先に「単身赴任手当」があったとすると、派遣社員が単身赴任していた場合にも支給されるのか。他にも、「転勤者住宅」「休職制度」等、均等・均衡待遇の確保にはさまざまな論点があると思われるが、これらのQAはない。実際に質問はあったと思うのだが、うまく回答できないので掲載しなかったのではないかと勘繰ってしまう。 あくまで想像にすぎないが、厚労省でも、制度はつくったものの「派遣先均等・均衡方式」は非現実的であることを認識し、もてあましているのではないだろうか。 1月11日の日経新聞に大手派遣会社は労使協定方式を選択するとの記事があった。労使協定方式もいろいろと面倒な手続きがあるが、派遣先均等・均衡方式よりは使い勝手がよいという判断なのだろう。中小含め、大半はこちらに流れると思われる。 記事では派遣料金が1~2割上がることも触れており、派遣先均等・均衡方式の方がコストを抑えられる可能性もある。そうしたメリットから派遣先にも一定のニーズが期待でき、派遣先均等・均衡方式を考える派遣会社もあるはずだ。ただ、それらの会社も、このQAを見て、「やはり無理だ」とあきらめてしまわないかと心配である。 にほんブログ村に参加しています。 |
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