2019/7/8

中途採用者の定着促進

 
 手間暇そしてお金をかけて入社してもらった中途採用者が定着できず、短期に辞めてしまう。経営者や人事担当者から、そのような嘆きをしばしば耳にする。それなりの努力はしているのだが、どうも効果は薄い。中途採用者の定着にはいったい何が重要なのだろうか。これについて、リクルートキャリア社が行った「中途入社後活躍調査」が参考になる。

 調査は3回に分けて行われているが、このうち定着に関するのは第1回と第3回である。それぞれ結果を見てみよう。

 第1回調査では、「定期的な上司との面談」が定着に最も効果があることを明らかにしている。確かに、上司とのコミュニケーションを通じて、新たな職場での自分の仕事の仕方が正しいのかどうかや立ち位置はどうかの把握ができ、会社への定着に結びつくことは直感的に理解できる。

 「歓迎会など非公式イベント」「導入研修」も好影響を与えるとのことだ。これも、最初のハードルとなる導入部を円滑に進めるという意味で効果大であると理解できる。

 一方で、「中途入社者同士のコミュニティづくり」「定期的な入社後アンケート」は悪影響を与えるとのことだ。意外な結果ともいえるが、これらが中途採用者の不満を募らせる場になってしまうということかもしれない。ちなみに「定期的な人事との面談」は影響なしという結果だった。

 こういった施策の実施率を見ると、「歓迎会など非公式イベント」や「導入研修」は4割を超えるものの、「定期的な上司との面談」は3割弱とやや低い。即戦力の中途採用者に対して上司面談の必要性は低いとの考えがあるのかもしれないが、その重要性を再認識すべきだろう。

 第3回調査では、第1回の「上司との面談」が離職防止に有効との結果を踏まえ、どのようなコミュニケーションが適切かを検討している。その結果、離職意向に最も影響ある要素は、「短時間でも上司と雑談していること」が示された。

 近年、職場における「雑談」の大切さが注目されるようになっている。組織のパフォーマンスを向上させるには、メンバー間の信頼関係が重要となることは間違いない。ただ、信頼関係は一朝一夕に生まれるはずもなく、日々の雑談がベースになるという考えだ。かつてのように、仕事中に雑談をする余裕がなくなり、アフターファイブの雑談機会も減った現在では、意識的に雑談をする必要が出てきたともいえる。

 また、上司と以下のようなコミュニケーションを行っている人の方が、離職の意向が低く、パフォーマンスもよい傾向があることを指摘している。

①短時間でも、雑談と会社や組織の方針の意義/自分の役割・目標の意義に関する会話をしている
②1日に1回以上会話している
③ 1ヶ月あたり61分以上会話している

 気軽に雑談ができるというのは、組織の一員として認められることを意味する。そして、会社方針や自己の役割などを通じて、自分が組織に貢献できているかを確認できれば、仕事に必要な存在と認められることになる。つまり、中途採用者を組織のかけがえのないメンバーとして認めることが定着促進には重要ということだと思う。

 こういったことは新卒者にも大切だが、一定の猶予期間が認められる新卒者と違って、中途採用者は直ちに戦力となることが期待される。当然、本人もその自覚はあり、一刻も早く組織に溶け込みたいと思うだろう。その点の不安解消に大いに役立つのが雑談をはじめとする上司とのコミュニケーションといえそうである。
 

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