2019/1/29

同一労働同一賃金の取組手順

 
 同一労働同一賃金を主眼とする改正パートタイム・有期雇用労働法の施行は2020年4月(中小企業は2021年4月)である。

 施行時期が1年以上先であることや全ての企業が対象ではないこともあってか、企業の対応は遅れているようだ。
 日本商工会議所が全国の中小企業を対象に行った「働き方改革関連法への準備状況等に関する調査」でも、同一労働同一賃金について「対応済・対応の目途が付いている」企業の割合は36.0%と他の項目(「時間外労働の上限規制」45.9%、「年次有給休暇の取得義務化」44.0%に比べても低い。

 企業の担当者としては、「まだ先の話」なのだから余裕をもって構えている……わけではなく、「そろそろ始めなければ」と課題を認識しつつも、何をどう手をつけてよいのか、よくわからないという方も多いのではないだろうか。

 そもそも、法が求める同一労働同一賃金の内容が今一つ理解されていない。先の日商の調査でも、同一労働同一賃金の内容を知らないと答えたのは47.8%で、「時間外労働の上限規制」39.3%、「年次有給休暇の取得義務化」24.3%に比べて明らかに認知度が劣っている。よくわからないというのも対応の遅れの原因の1つといえそうだ。ただ、先送りにしているうちに、にっちもさっちもいかなくなるといった事態だけは避けなければならない。

 こうした企業の悩みに応えるものとして、厚生労働省が「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」を公表した。冒頭にマンガを載せるなど、人事労務のプロよりも、総務・経理をこなしつつ人事労務に携わるような中小企業の担当者(あるいは経営者)を意識したパンフレットである。

 手順は次の6つからなる。
1.労働者の雇用形態の確認
2.待遇の状況の確認
3.待遇に違いがある場合、違いを設けている理由の確認
4.違いが不合理でないことを説明できるように整理
5.法違反が疑われる場合の改善に向けての検討
6.改善計画の策定

 パンフでは、手順1~4までについて、検討事項のフォーマットを用意するとともに、記載例も示し整理しやすくしている。同一労働同一賃金に関してはガイドラインも示されているが、フォーマットはそれに即して作られており、いちいちガイドラインを参照しなくてもよい。とりあえずフォーマットに沿って記入をしていけば、ポイントを網羅できるはずである。

 ただし、取り組みの中核となる手順3の「違いを設けている理由の確認」と手順4の「違いが不合理でないことを説明」は、記載例はあるものの、基本的に自社の実態に即して記述内容を検討しなければならない。改善の有無の決め手となる箇所であり、記載例を参考・応用して適切にまとめる必要がある。パート・有期社員への説明義務もあることから、社員に納得してもらえるかを基準に検討を重ねてほしい。

 同一労働同一賃金は、就業規則や賃金規程の改定が必要になることや原資の問題もからんでくるため、とにかく早目の対応が求められる。パンフでも、まずは手順4までは早目に取り組むよう勧めており、法の施行は1年以上も先であるにもかかわらず、多忙な厚労省がこのような手順書を準備したのはそういった事情からである。厚労省の意図をくみ取り、手順書を活用してみてはいかがだろうか。


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