2024/5/26
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奨学金代理返還制度 |
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厚労省・文科省の発表によると、2024年春の大卒就職率は98.1%と1997年の調査開始以来、過去最高となった。また、リクルート就職みらい研究所によると、25年卒の内定率は前年を上回っており、新卒者の獲得競争はさらに激化しているといえそうだ。
あらためて奨学金代理返還制度のメリットを示すと以下のようになる。 1. 優秀な人材の確保 奨学金返済負担が軽減されるため、優秀な学生が企業に応募する可能性が高まる。 2. 社員の定着率向上 奨学金返済が企業によって肩代わりされることで、社員はその企業に長く勤める動機付けが強まる。 3. 企業のブランド向上 社員を大切にする姿勢を社会にアピールでき、企業のイメージアップにつながる。 4. 社員の税・社会保険料負担の軽減 奨学金代理返還制度の返還金は、社員の報酬とみなされないので、社員はその分の税金や社会保険料の負担をしなくて済む。一方で企業は損金扱いにできる。 一方でデメリットとして以下のものが挙げられる。 1. コスト負担 当然ながら、奨学金返還のコストが企業にかかってくる。特に多くの社員に対してこの制度を適用する場合、財政負担が大きくなる可能性がある。 2. 公平性の問題 実質的に給与額が異なることになるため、奨学金を持つ社員と持たない社員との間で、公平性の問題が生じる可能性がある。 3.人材要件のアンマッチ 自社に合っていない人材が来る可能性がある。また、合ってないにもかかわらず、奨学金返還のために長期間在籍せざるを得ない可能性がある。企業からすると、期待通りのパフォーマンスを発揮しない社員を長く抱え続けることになる。 デメリットのうち、悩ましいのは2の公平性の問題である。別に奨学金を抱えない社員に不利益となるわけではないのだが、誰かの得は自分の損と考えてしまうのも人間のサガである。「そのお金を全社員に配って」との思いが生じるのは仕方がない。まして、対象者のパフォーマンスが低かったりすると、(対象者であることを知っていればだが)周囲の目はキツクなるのは否めない。 正直、この問題への効果的な対応策はないのが実情である。対象でない社員に、他の福利厚生を付与するというのも難しい。そもそも、家族手当や住宅手当、育児休業介護休業など、社員に対する施策には何らか不公平が生じるものである。新たな火種を抱えたくないというのであれば、導入しないほうがよいかもしれない。導入するのであれば、まずは、その趣旨をしっかり社員に説明しておくことが大切となるだろう。 にほんブログ村に参加しています。 |
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