2023/5/7

最低評価でも昇給?

 

「労政時報第4054号」(労務行政研究所)の「基本給の昇降給ルールと賞与制度の最新実態」に興味深いデータがあった。人事評価が最低であっても、昇給する企業が多くはないものの存在するというものだ。具体的には以下の通りである。

 まず、人事評価によって「降給はない」とする企業は一般社員で36.5%、管理職で20.7%である。その場合の最低評価時の取り扱いを見ると、

●一般社員
昇給はない(横ばい) 38.5%
等級によっては昇給し得る 26.2%
全等級で昇給し得る 35.4%
●管理職
昇給はない(横ばい) 74.3%
等級によっては昇給し得る 11.4%
全等級で昇給し得る 14.3%

 となっている。つまり、最低評価でも昇給する企業が一般社員の約14%(36.5%×(1-38.5%))、管理職でも約5%(20.7%×(1-74.3%))は存在するということになる。これはどういうことだろうか?

 最低評価というのは、会社・上司が期待する能力・行動・業績等を大幅に下回った場合と考えられる。にもかかわらず給与が上がるとは? 念のために言うと、本調査での昇給には、ベースアップは含まない。

 考えられる理由として、

①能力は基本的に下がることはなく、最低評価であっても何らかの伸長はあったはずなので昇給させる。
②ベアは毎年行うとは限らないため、生活安定のために少しでも昇給させる。
③人事評価は万能とはいえない。評価以外にも貢献があるかもしれないので、最低評価でも昇給させる。
④評価者が適正な評価をしていない可能性があるため、最低限の昇給は行う。
⑤これまでそのような取り扱いを続けてきているため何となく。
⑥最低評価はほとんど存在せず、実際に影響はないため。
⑦特に理屈はない。強いて言えば昇給させないとかわいそうだから。

 などが思いつく。①は、職能等級に降格がない理由を給与にも当てはめたものである。③④は、評価制度を自ら否定しているようで、公言はできないだろう。⑤~⑦は理由とも言えないものだが、案外、当たっているような気がする。

 筆者が昇降給制度を設計する際、最低評価の場合は、新入社員(または中堅社員)クラスまでは横ばい、それ以上は降給とするのが基本である。

 こう言うと身も蓋もないが、人件費は限られたパイの奪い合いである。誰かを増やせば、その分、誰かが減る。限られた人件費の範囲内でいかに社員の納得性を高めるか。

 最低評価であれば、下げるのはともかく、せめて現状維持に留めるのが、多くの社員の納得性を高めるのではないだろうか。少なくとも管理職クラスは、そのような仕組みとするのが妥当と思うのだが。     

 


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