2022/6/26

賃金男女間格差の開示

 2021年の一般労働者(常用労働者のうち短時間労働者以外の者)の賃金(所定内給与額)の男女間格差は、男性100に対し女性は75.2となっている。女性は男性のおよそ4分の3で、諸外国と比べて格差が大きい。

 格差は長期的には縮小傾向にあるものの、諸外国に比べて速度は遅く、日本がジェンダーギャップ指数の経済分野で117位(2021年)と低迷する要因の1つとなっている。こうした事態を是正するために企業側の努力を促そうということで、政府が進めているのが企業による格差の情報開示である。

 これを受け、6月17日の厚生労働省の労政審雇用環境・均等分科会にて、女性活躍推進法に基づく男女の賃金格差公表に関する素案が示された。内容をまとめると下記のとおりである。

対象:労働者301人以上の事業主(101人~300人の事業主については、その施行後の状況等を踏まえ、検討を行う)
開示の仕方:絶対額ではなく、男性の賃金に対する女性の賃金の割合で開示を求める
開示を求める区分:全労働者 / 正規雇用労働者 / 非正規雇用労働者。なお、企業の判断で、さらに細かい雇用管理区分(正規雇用を正社員と勤務地限定正社員に分ける等)についても開示することは可能
施行:本年7月(※事業年度が4月~翌3月の場合は、令和4年4月~令和5年3月分を令和5年4月以降に開示)


 現在、女性活躍推進法では、雇用面での男女間の格差について、301人以上企業に2項目の開示義務(「機会提供」8項目から1項目、「両立」7項目から1項目)があるのだが、これに「男女の賃金の差異」を必須項目として追加する形となる。

 ところで、そもそもなぜこのような格差が生じているのかだが、労政審分科会の資料では、役職、勤続年数、労働時間、学歴、年齢、企業規模、産業の7つにつき、格差への影響度合いを分析している。なお、一般に格差の要因として「女性は非正規雇用が多いから」というのも指摘されるが、冒頭にも示したように、ここではいわゆる正社員を前提に話をしているので、注意していただきたい。

 結果を見ると、最も影響が大きいのは役職で、ウェイトでいえば50%を占める。続いて勤続年数が20%、労働時間と学歴がそれぞれ10%、年齢5%といったところだ。企業規模は影響がゼロで、産業はむしろ女性の方が高賃金になる要因としている。

 格差是正には、まずは役職、つまり女性の管理職登用がポイントになるということだ。女性管理職が多い企業では、賃金格差が小さいことが推測される。現在の開示項目の1つに”管理職に占める女性の割合”がある。これを開示している企業で、今般開示される賃金格差がどのような状況になっているか注目したい。            

 


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