2022/5/8

社員が成長を実感できる機会とは

 社員がこの会社で働き続けたいと思う要素には、仕事のやりがいや面白さ、給与等の待遇、職場の人間関係、会社のビジョンなど、様々なものがある。これら以外に「自分の成長を実感できる」というのも大切な要素だ。特に新卒者など、若手社員のリテンションには有効と考えられる。

 それでは、社員はどのようなときに成長を実感するのだろうか。日本生産性本部の「第9回働く人の意識調査」によれば、自分自身の仕事能力の向上を実感した「きっかけ」として上位5つに挙げられているのは、以下のものだ(複数回答)。

①「従来よりも、レベルの高い業務を担当した」18.1 %
②「従来とは、分野の異なる業務を担当した」17.9%
③「仕事に関して学んだことを実際に活用できた」17.3 %
④「自分の仕事の成果・やり方について、具体的な意見をもらった」12.2%
⑤「従来とは、違うツールやシステムを使うようになった」10.9%

 ③と④とのパーセンテージに差があることから、①~③が成長を実感できる機会の基本といえるだろ。部下指導をする上司の視点からいえば、

①レベルの高い業務をやってもらう(質の向上)
②これまでと違う業務をやってもらう(幅の拡大)
③OJTや研修等で学んだことをやってもらう(知の実践)

 という指導の仕方が社員の成長機会となり、モチベーション向上にもつながるということだ。

 このうち①と②は、計画的かどうかはともかく、管理者としてほとんどの上司は実践しているはずだ(もちろん、計画的に行なうことが重要だが)。

 一方、③を意識している上司は少ないのではないかと思う。もちろん、結果的にやってもらうことはあるだろうが、やはり上司が意識をし、部下に「○○研修で△△のスキルを学んだと思うから、今回の業務で具体的に発揮してほしい」と言えば、部下も実践への意識がより高まるに違いない。また、実践の機会がない場合は、可能な限り上司の方でつくるよう努力したい。こういったことは、研修の形骸化を防ぐという副次的なメリットも生むはずだ。

 ところで、上記質問で最もパーセンテージが高かったのは、残念なことに「仕事能力の向上を実感したことが無い」(38.0%)である。

 人間は、能力の上限が定まっている機械ではないのだから、実際には何らか向上はしているはずだ。ただ、その実感がないというのは、上司にも多分の責任があると思われる。成長を意識させたり、成長を認めたりするような上司からの働きかけがあれば、向上を実感できる人はもっと多くなるに違いない。

 社員に成長を実感してもらうために、会社として能力開発体系の策定や面談制度の実施などの施策も考えられるが、まずは上司の部下指導のあり方やコミュニケーションの仕方を見直すことが、最も基本で、簡単で、効果的であると思う。質の向上、幅の拡大、知の実践の3つを基本に、部下の成長機会をあらためて考えてほしい。            

 


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