2019/4/7

改正後の長時間労働者に対する面接指導

 
 働き方改革関連法が4月1日から施行となった。話題の中心は、労働時間規制や年休付与義務、高度プロフェッショナル制度などの労働基準法だが、労務管理の実務では、労働安全衛生法関連も見落としてはならない。

 これに関して、厚生労働省のHPで『「産業医・産業保健機能」と「長時間労働者に対する面接指導等」が強化されます』というパンフレットが公表された。このうち、企業・人事部門にとって重要となる後者について、パンフレットに即し、そのポイントをまとめてみたい。ポイントは全部で6つある。

1.労働時間の状況の把握
(1)事業者は、面接指導を実施するため、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間(ログインから ログアウトまでの時間)の記録等の客観的な方法その他の適切な方法により、労働者の労働時間の状況を把握しなければならない。
(2)事業者は、これらの方法により把握した労働時間の状況の記録を作成し、3年間保存するための必要な措置を講じなければならない。

 これまで、労働時間の把握はサービス残業是正の趣旨から行政が指導してきたものだが、今般、労働者の健康確保措置を適切に実施する観点から安衛法で規定されることとなった。

 対象者は、高度プロフェッショナル制度対象労働者を除き、①研究開発業務従事者、②事業場外労働のみなし労働時間制の適用者、③裁量労働制の適用者、④管理監督者等、⑤派遣労働者、⑥短時間労働者、⑦ 有期契約労働者を含めた全ての労働者である。なお、派遣労働者については派遣先事業者が把握を行う。

2.労働者への労働時間に関する情報の通知
 事業者は、時間外・休日労働時間の算定を行ったときは、当該超えた時間が1月当たり80時間を超えた労働者本人に対して、速やかに当該超えた時間に関する情報を通知しなければならない。

 通知の対象者は、上記1と同様、高度プロフェッショナル制度の対象労働者を除いた全ての労働者である。

 通知方法は書面や電子メール等が適当とされるが、給与明細に時間外・休日労働時間数が記載されている場合には、これをもって労働時間に関する情報の通知としても差し支えない。

3.医師による面接指導の対象となる労働者の要件
 面接指導の対象となる労働者の要件が、「時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる者」に拡大された。

 この要件を満たす労働者からの申し出によって行う。 「80時間」の算定はあくまで法定労働時間・休日に基づいて行うものであり、“所定外労働時間”ではないことに注意したい。

4.研究開発業務従事者に対する医師による面接指導
 事業者は、時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超える研究開発業務従事者に対して、申し出なしに医師による面接指導を行わなければならない。

 3と違って、「申し出なし」に実施しなければならない点に注意が必要である。そのため、面接指導の費用は事業者が負担しなければならない。また、面接指導は所定労働時間内に行われる必要があり、所定労働時間外に行った場合は割増賃金を支払わなければならない。
 
 また、時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超えない場合でも、その超えた時間が80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められた場合には、改正安衛法第66条の8第1項に定められた面接指導(=上記3)の対象となるため、労働者から申し出があれば、事業者は面接指導を行わなければならない。

5.高度プロフェッショナル制度対象労働者に対する医師による面接指導
 事業者は、1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた時間が、1月当たり100時間を超える高度プロフェッショナル制度対象労働者に対して、申し出なしに医師による面接指導を行わなければならない。

 健康管理時間の算定期間中に、高度プロ制度対象労働者から一般の労働者に転じた場合は、高度プロ対象者ではなくなる日までに算定した健康管理時間に基づく措置と、その後の一般の労働者に基づく措置をそれぞれ講じることになる。この2つに該当しなくても、両者の通産時間によって一般の労働者に基づく措置を講じなければならない。逆のケース(一般労働者から高度プロ対象者に転換した場合)も同様である。

 また、面接指導の費用は、上記4の研究開発業務従事者の場合と同じく事業者負担となり、面接指導時間は健康管理時間に含めて計算する。

6.面接指導を行う労働者以外の労働者に対する必要な措置
 事業者は、面接指導を行う労働者以外の労働者であって健康への配慮が必要なものについては、必要な措置を講じるように努めなければならない。

 6は努力義務である。必要な措置とは、労働者に対して保健師等による保健指導を行うこと、チェックリストを用いて産業医等が疲労蓄積度を把握の上で、必要な者に対して面接指導を行うこと、事業場の健康管理について事業者が産業医等から助言指導を受けること等である。

 以上の6つがポイントとなる。長時間労働者に医師の面接指導が必要であることは、人事労務の担当者ならば認識していると思うが、この4月から何がどのように変わったのか、整理しきれていない人も多いだろう。上記により、そのポイントをつかんでいただければ幸いである。



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