2019/1/21

働き方改革の改正労基法Q&A~その2

 
 
 前回に続いて、厚生労働省が示した労基法改正Q&Aの主要箇所を確認する。今回は使用者による年休時季指定についてである。

3.年5日以上の年次有給休暇の確実な取得

問1
 使用者による時季指定は、いつ行うのか?
(回答)
 使用者による時季指定は、必ずしも基準日からの1年間の期首に限られず、当該期間の途中に行うことも可能である。

 時季指定を期首に限れば、運用上、支障が出ることは明らかで、期間中の指定について、あらためてお墨付きを与えられたと言えそうだ。

問2
 法第 39 条第7項に規定する「有給休暇の日数が10労働日以上である労働者」には、比例付与の対象者で、前年度繰越分の有給休暇と当年度付与分の有給休暇とを合算して初めて 10 労働日以上となる者も含まれるのか?
(回答)
 「有給休暇の日数が10労働日以上である労働者」は、基準日に付与される年次有給休暇の日数が10労働日以上である労働者を規定したものであり、比例付与の対象者で、今年度の基準日に付与される年次有給休暇の日数が10労働日未満の者は、仮に、前年度繰越分の年次有給休暇も合算すれば10労働日以上となったとしても含まれない。

 繰り越し分は含まずに、純粋に今年度の付与分だけで10日以上が必要ということだ。比例付与対象者以外にも、前年度に欠勤により出勤日が8割に満たなく、今年度の付与はないものの繰り越し分は10日以上残っているというようなケースがあっても、指定の必要はないという理解でよいと思う。

問3
 時季指定を半日単位や時間単位で行うことはできるか?
(回答)
 労働者の意見を聴いた際に半日単位の年次有給休暇の取得の希望があった場合は、使用者が時季指定を半日単位で行うことは差し支えない。この場合、半日の年次有給休暇の日数は 0.5 日として取り扱う。 また、時季指定を時間単位年休で行うことは認められない。

 心身のリフレッシュという年休制度の趣旨や、年休取得率の向上という今回の改正目的に照らし、半日はともかく時間単位はそぐわないということだろう。

問5
 指定した時季を、使用者又は労働者が事後に変更することはできるか?
(回答)
 指定した時季について、使用者が意見聴取の手続を再度行い、その意見を尊重することによって変更することは可能である。また、使用者が指定した時季について、労働者が変更することはできないが、使用者が指定した後に労働者に変更の希望があれば、使用者は再度意見を聴取し、その意見を尊重することが望ましい。

 一方的な変更はできないが、話し合いによる変更は可能ということである。この表現によると、労働者の変更希望にはなるべく応じるべきとの当局の意向がうかがえる。

問6
 基準日から1年間の期間(以下「付与期間」)の途中に育児休業が終了した労働者等についても、5日の年次有給休暇を確実に取得させなければならないか?
(回答)
 付与期間の途中に育児休業から復帰した労働者等についても、5日間の年次有給休暇を取得させなければならない。ただし、残りの期間における労働日が、使用者が時季指定すべき年次有給休暇の残日数より少なく、5日の年次有給休暇を取得させることが不可能な場合には、その限りではない。

 「労働者等」に該当するのは、一般的には育児介護休業者や業務上傷病休業者、産前産後休業者など、休業日が出勤日扱いとなることで年休の権利が付与される者だろう。ただし、休職復帰者など、それ以外の者であっても、10日以上の権利があれば、復帰後の残りの期間について5日を付与しなければならない。極端な例だが、残りの期間が5日ならば、全部、年休とする必要があるということだ。

問7
 使用者は、5日を超える日数について時季指定を行うことができるか?
(回答)
 労働者の個人的事由による取得のために労働者の指定した時季に与えられるものとして一定の日数を留保する観点から、5日を超える日数を指定することはできない。また、使用者が時季指定を行うよりも前に、労働者自ら請求し、又は計画的付与により具体的な年次有給休暇日が特定されている場合には、当該特定されている日数について使用者が時季指定することはできない。

 年休取得の促進のためには、5日超の指定があってもよいと思うが、制度の建前上、労働者が自由に取得する日数を残しておかないとマズイということだろう。労使協定により認めるという選択肢があってもよいのでは?

問8
 あらかじめ使用者が時季指定した年次有給休暇日が到来するより前に、労働者が自ら年次有給休暇を取得した場合、当初使用者が時季指定した日に労働者が年次有給休暇を取得しなくても、法第 39 条第7項違反とはならないか?
(回答)
 設問の場合は労働者が自ら年次有給休暇を5日取得しており、法第39 条第7項違反とはならない。なお、この場合において、当初使用者が行った時季指定は、使用者と労働者との間において特段の取決めがない限り、当然に無効とはならない。

 すでに5日分を取得したときは、使用者指定分は未消化となってもかまわないということである。ただ、自動的に無効となるわけではないので、基本的には取得させなければならない。

問12
 事業場が独自に設けている法定の年次有給休暇と異なる特別休暇を労働者が取得した日数分については、法第 39 条第8項(5日を限度に既に与えた日数分の除外規定)が適用されるか?
(回答)
 法定の年次有給休暇とは別に設けられた特別休暇(たとえば、時効が経過した後も、取得の事由及び時季を限定せず、法定の年次有給休暇を引き続き取得可能としている場合のように、法定の年次有給休暇日数を上乗せするものとして付与されるものを除く)を取得した日数分については、法第 39 条第8項の「日数」には含まれない。
 なお、法定の年次有給休暇とは別に設けられた特別休暇について、今回の改正を契機に廃止し、年次有給休暇に振り替えることは法改正の趣旨に沿わないものであるとともに、労働者と合意をすることなく就業規則を変更することにより特別休暇を年次有給休暇に振り替えた後の要件・効果が労働者にとって不利益と認められる場合は、就業規則の不利益変更法理に照らして合理的なものである必要がある。

 年休とは別の特別休暇は含めないが、ただし、年休の上乗せ分は含めるということだ。重要なのは「なお」以下の部分で、既存の特別休暇を年休に変えることへの警鐘である。検討している企業も多いと見られ、行政が機先を制する形となった。


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