2018/10/16

学生が行きたくない会社

 
 就職戦線は空前の売り手市場で、一部の人気企業を除いて学生の奪い合いとなっている。

 ところで、企業がどんなに優秀な学生を熱望し、自社の素晴らしさをアピールしても、学生の方は「こんな会社には行きたくない」と思っているかもしれない。

 では、就活学生が敬遠したい会社とはどんな会社だろうか。マイナビが2019年卒業予定の学生を対象にした調査(「2018年度(2019年卒)新卒採用・就職戦線総括」)で、「学生が行きたくない会社」として上位に挙げられたのは次の5つである。

①暗い雰囲気の会社 31.8%
②ノルマのきつそうな会社 30.9%
③休日・休暇がとれない(少ない)会社 25.4%
④仕事の内容が面白くない会社 20.8%
⑤転勤の多い会社 19.9%

 以下、企業の採用の視点から、それぞれコメントを加えてみたい。

 「暗い雰囲気の会社」というのは、最初の説明会やインターンシップでの担当者の印象によるものが多いと思われる。筆者はやたらノリのよい会社よりも、「暗い会社」のほうが落ち着きがあってよいと思うのだが、それはともかく、一方的に「暗い会社」を否定せず、企業の社風や個性を打ち出すことが重要であると思う。
 地味な社風の企業が、採用のためにハイテンションを装っても無理があるし、そのような社員が入社しても扱いに困るだろう。あいさつもしないような「暗さ」は論外にしても、「大人しい会社」「静かな会社」には多くの学生の需要があるはずだ。「暗い」の中身を見極めるのが大切てある。
 
 「ノルマのきつそうな会社」というのも、世間的なイメージやネットの無責任な情報に踊らされている気がする。
 ノルマをどうとらえるかにもよるが、単純に数字を押しつけられ、その結果をもって信賞必罰を受けるというのであれば確かに敬遠したくなる。そうではなく、レベルの高い仕事を期待されるととらえれば、むしろよい会社と考えられる。
 その辺の区別がついていない学生も多いと思われるので、企業側はしっかりと説明すべきである。もし実際に厳しい割当ノルマを課しているのであれば、その必要性やメリットを示すのも大切だろう。数字で明確化するかどうかは別にして、広い意味でノルマのない会社など皆無であることは、学生にも知ってもらうべきである。

 「休日・休暇がとれない(少ない)会社」
を避けるのは、単純に休みがたくさんほしいことに加えて、ブラック企業であるかどうかの判断要素になるからだろう。
 年休取得率などは数値で明確化できるので、これを開示したい。もし、低いのであれば、今後どう高めていくかを示せばよい。マイナスの情報を隠すよりも、それを明らかにして正直さや真摯さを訴える方が、イメージは良くなると思う。

 「仕事の内容が面白くない会社」というのも突っ込みどころが多々ある。
 まず、当たり前のことだが、趣味や遊興ではないのだから、面白くないことはたくさんある。ときどき、一定の成功を収めた人が「仕事が面白くてたまらない」と語るのをインタビュー記事などで見かけることがあるが、それはごく一部であり、苦労して成功したからこそ言える言葉である。学生は表面的な部分だけを真に受けている可能性が高い。
 また、ほとんどの仕事はやってみなければわからない。説明会での話やわずかなインターンシップの経験で判断できることではないだろう。逆に、面白いと思った仕事が、入社後、実際にやってみるとつまらなかったというケースも多いはずだ。こういったことを企業はしっかり説明すべきだと思う。

「転勤の多い会社」が上位となっているのは、若者の保守化や安定志向の表れか、それとも、労働者の権利意識が高まっているからか。いずれにしても、今後、ウェイトを高めていくことが想定される。
 転勤のある企業としては、転勤のない処遇を用意したり、転勤者のメリットを強化したりする必要がある。一方で、転勤のない中堅・中小企業はその点を大いにアピールすべきだろう。

 最後に、6位以下で10%以上のものを挙げると、残業が多い会社(14.4%)、給料の安い会社(14.0%)、体質が古い会社(10.7%)、大学・男女差別のありそうな会社(10.6%)、となっている。心当たりのある企業は、これらにも留意していただきたい。ポイントは学生に対して、丁寧に真摯に説明することである。


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