2018/5/21

運悪く低評価となった社員の救済

 
 人事評価は、一定期間の社員の能力の発揮度や成果・業績の度合いを判定するものである。公平性の確保は最重要の課題で、企業はそれを念頭に置いて制度設計、見直し、評価者訓練などに取り組む。

 ただ、どのように精緻に制度を設計しても、また、評価者トレーニングに時間をかけても、不公平な評価というのは発生する。特に、社員に責任のない「偶々の事象」により、運悪く低評価とならざるをえない事態がままある。

 典型的な例としては、営業社員の業績評価で大口の取引先に不祥事が発覚し、売上目標を達成できなくなるようなケースである。外的な要因だけでなく、たとえば、部下がうつ病となり、その対応やサポートに振り回されたり、育児休業や介護休業でメンバーが欠け、補充がないまま組織業績が低下し、マネジャーの評価が低くなる場合などの内的な要因もある。

 特に、うつ病などのメンタルヘルス対応は、会社の体制が整備されていなければ直属上司に大きな負担がかかる。 そのような事態への対応も上司の責任といえばそれまでだが、やはり限界はある。

 成果主義が徹底している企業では、低評価により年収が百万円単位で下がることもある。当事者にとっては、「運が悪かった」では済まされないだろう。

 評価者によっては、部下の苦労・大変さをくみ取って、適宜、プラス評価をする者もいるかもしれない。ただし、そういった対応をしない上司もいるので、これはこれで不公平が生じる。

 そう考えると、企業として一定の救済措置を設けておくことも検討しなければならない。救済措置には次のようなものがある。

A.加点評価制度
 このような事態への対応のため、評価者等の判断で加点できる仕組みを設けておく。たとえば、能力評価が100点満点であったとすると、10点を加点できるようにする。これにより、C評価であったものをB評価に救済しうる。

B.ノーカウント制度
 正当な評価は無理との判断で当期の評価はB(普通評価)とする。ただし、評価自体は行い、能力開発等に活かす。B評価という結果は、昇給・昇格・賞与等に反映させる際に用いる。濫用を防ぐために人事担当役員など、高いレベルでの判断が必要と考えられる。
 なお、ノーカウント制度の派生形として、一定期間を評価対象期間から除外する「サスペンド制度」もある。

 もちろん、「逆に運がいいときもあるのだから、今回は仕方がないとあきらめてもらう。ただし、情意評価などがあれば、可能なかぎりフォローする」といった形で、救済措置は無しとするのも一法である。一般には、この取扱いが多いと思うが、結果としてそうなっているだけで、きちんと検討したうえでの対応ではないと思う。

 今日、人事評価に対する社員の問題意識は、以前よりも確実に高まっている。運悪く低評価となった社員への対応について、会社としての考え方をあらためて整理してみてはいかがだろうか。

 

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