重本コンサルティングオフィス
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2018/4/2

成果型報酬は有効か

 業績・成果を給与や賞与などに反映させる成果型報酬は、程度の差はあれ、多くの企業で導入されている。これは、成果型報酬が社員のヤル気を高めると考えられているからだ。いわゆる「馬の鼻先にニンジンをぶら下げる」ということだが、本当に効果があるのだろうか? また、あるとすれば具体的にどのような効果があるのだろうか?
 
 近年、行動経済学の分野でその実証研究がなされている。そのうち、報酬制度を考える際に特に有用と思われる知見をいくつか紹介したい。

 まずは、個人報酬とチーム報酬の業績への効果を実証したドイツのコンラット・キール大教授らの研究である。彼らの研究を簡単にまとめると次のようになる。

①成果型報酬の方が、それを導入しない場合よりも業績は高まる。
②業務内容が複雑になるほど、成果型報酬は効果的である。
③個人の業績に基づいて行う個人報酬制度とチーム業績に基づいて行うチーム報酬制度を比べると、チーム報酬制度の方が業績は高まる。
④チーム報酬制度の場合、メンバー全員に平等に分配するよりも貢献度に応じて分配する方が効果的である。
⑤成果を質と量で測定した場合、個人報酬方式では、質で測定したときの方が効果は大きい。一方、チーム報酬方式では、質と量の違いによる影響は見られない。

 また、米ワシントン大学のチャン准教授らは、次の研究結果を報告している。

・社員の能力差が大きい場合、個人報酬方式では、全体の売上は減少する。能力の高い社員は、能力の低い社員のサポートをせず、それどころか、その顧客を奪うからである。一方、チーム報酬方式では、全体の売上は向上する。能力の高い社員が、能力の低い社員をサポートすることでその業績が向上するからである。

 以上を業績向上の観点から大雑把に整理すると、「チーム・貢献度分配方式による成果型報酬」が、最も効果的といえそうである。

 また、少し派生的になるが、成果型報酬の効果として次の3つを紹介したい。

 1つ目は、成果型報酬のスクリーニング効果である。 これは、成果型報酬の仕組みを導入、周知することにより、能力の高い人が残り、低い人は退社してしまうという効果である。成果型報酬制度では、能力の高い社員は高収入を期待できるが、能力の低い社員は低収入を余儀なくされる可能性が高いからだ。

 2つ目は、モチベーション・クラウディングアウト効果である。 これは、成果型報酬制度が社員の内発的モチベーションを下げてしまう現象をいう。たとえば、誰かの役に立ちたいといった内発的モチベーションで行動している社員が、成果型報酬による金銭的報酬に目が行き、内発的モチベーションが低下してしまうケースである。このとき、金銭的報酬が低いと消失した内発的モチベーションの分を補充できず、行動レベルが下がることになる。下手に成果型報酬を設けたことで、かえって業績が下がってしまうという効果である。

 3つ目は、高額の成果型報酬がむしろ逆効果となるケースで、これには緊張効果歪み効果の2つがある。

 緊張効果とは、成功報酬が非常に高額であるとか、昇進がかかっているなどの場合に、緊張してしまって実力を十分に出せなくなることをいう。心理学においても、プロスポーツでホームとアウェイとでは、一般的にはホームが有利だが、優勝が決定するような重要な試合はアウェイの方が勝率が高くなるという研究があるが、同様のことを指摘していると考えられる。

 歪み効果とは、業績評価の対象になるものだけに目が向いて全体像が見えなくなり、総合的な判断や創造的な問題解決ができなくなってしまうことをいう。たとえば、売上達成度だけが評価される場合に、コストを度外視したり、コンプライアンスを無視したりするケースである。

 このように、基本的に成果型報酬は業績向上に貢献するものの、いかなるケースにおいても望ましいというわけではない。状況に応じた使い分けが必要ということだ。

 もう1つ、指摘した事項に従って制度設計をすれば必ずうまくいくわけではない点にも留意が必要だ。ただ、成功の可能性が少しでも高まるのは確かだろうし、仮設・検証の枠組みとしても利用できるだろう。参照できる項目があれば、ぜひ活用していただきたい。


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