2018/3/26

同一労働同一賃金とは~その2

 「同一労働同一賃金」の実現に向けて、法律がどのように改正されるのか、前回に続いて整理をしたい。前回は「均等待遇」と「均衡待遇」の違いを確認したが、それが、現状の法律にどう定められているかを見てみよう。

●パート労働法
 第9条で、通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対して、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いをしてはならないことを定めている。これは「均等待遇」についての定めである。

 また、第8条で、短時間労働者の待遇の相違は、業務に伴う責任の程度、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならないことを定めている。これは「均衡待遇」に該当する。
 
●労働契約法
 第20条で、有期労働者の労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならないことを定めている。これは「均衡待遇」ということになる。

 なお、これらとは別に「均衡を考慮する努力義務」が、パート労働法第10条と労働者派遣法第30条の3に規定されている。

 次に、これらの規定がどう変わるのかを見てみよう。ポイント次の3つである。

1.「均等待遇」の範囲の拡大
 現状、パートタイマー(短時間労働者)だけを対象としている均等待遇の規定を有期労働者や派遣労働者にも拡大する。
 有期労働者については、現在のパート労働法を「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」と改称し、第9条に有期労働者を含めることで対応する。
 派遣労働者については、労働者派遣法にパート労働法第9条と同様の規定を設けて対応する。なお、このとき比較対象となるのは派遣先の労働者である。ただし、同種業務の労働者の賃金水準と同等以上であることなどの一定要件の下、労使協定を結ぶことで、均等待遇の規定を適用しないという選択もできる。

2.「均衡待遇」の範囲の拡大
 現状、パートタイマー(短時間労働者)と有期労働者を対象としている均衡待遇の規定を派遣労働者にも拡大する。ただし、上記の均等待遇と同様に労使協定により不適用とすることができる。
 つまり、パートタイマー・有期労働者・派遣労働者のいずれも、均等待遇・均衡待遇が原則義務化されることになるわけだ。

3.「均衡待遇」の合理/不合理の明確化
 現在、パートタイマー(短時間労働者)も有期労働者も均衡待遇は規定されているが、何が合理的で何が不合理かが不明確であった。これについてガイドラインを示すということである。ガイドラインについては、2016年12月にその案が策定されているが、これが法的な拘束力を持つことになる。

 以上をまとめると次のようになる。
 
 雇用形態
 均等待遇
 均衡待遇
 パートタイマー
 あり → あり
 あり → 明確化
 有期労働者
 なし → あり
 あり → 明確化
 派遣労働者
  なし → あり(※)
 なし → あり(※)
※労使協定による適用除外あり。
 
 このように同一労働同一賃金の法制化は、まったく新しいルールを設けるというよりは、現行ルールの対象を拡大するものととらえられる。だからといって影響が少ないとか、対応は不要というわけではない。 今回整理をしたように、何がどう変わるのかを体系的に押さえたうえで、対応を考えていくことが重要だと思う。


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