先日、人事院が国家公務員の配偶者手当を廃止する方針を示した。現在、国家公務員の扶養手当は、配偶者は原則月6500円、子どもは1人当たり原則月1万円が支給されている。今般、配偶者手当を2026年度までに廃止する一方で、子ども手当を増額するとのことだ。
民間でも配偶者手当を支給する企業は減っており、人事院の調査では、2023年に手当を支給した企業の割合は56%で、2015年の69%から10ポイント以上低下しているとのことである。
このように配偶者手当の見直しは世間の流れとなっており、政府も「配偶者手当の在り方の検討に向けて」(令和6年4月改訂版)を示すなど、流れを後押ししている。
本コラムでは、配偶者手当を見直すにあたっての方向性を整理してみたい。話をシンプルにするために、
配偶者手当:配偶者に支給する手当
子ども手当:子どもに支給する手当(障害者等の扶養家族を含む場合もあり)
家族手当(扶養手当):上記の2つを含む手当
と定義づけておく。つまり、家族手当(扶養手当)は配偶者手当と子ども手当から成ると考える。
それでは、配偶者手当見直しの方向性だが、これには、1.配偶者手当の廃止、2.配偶者手当の減額、という2つのパターンがある。配偶者手当を増額するパターンもあるが、ごく少数と考えられるので省略する。
1はさらに、次の4パターンに分けられる。
①配偶者手当だけでなく、子ども手当も廃止する(=家族手当の廃止)
②配偶者手当は廃止するが、子ども手当は減額に止める
③配偶者手当は廃止するが、子ども手当は現状維持する
④配偶者手当は廃止するが、子ども手当は増額する
冒頭に揚げた国家公務員の例は④に該当する。同様に2はさらに、次の3パターンに分けられる。
①配偶者手当は減額し、子ども手当も減額する
②配偶者手当は減額するが、子ども手当は現状維持する
③配偶者手当は減額するが、子ども手当は増額する
なお、「配偶者手当減額・子ども手当廃止」といったパターンも理論的にはあり得るが実際的ではないので除外する。
ところで、配偶者手当の廃止・減額で生じた原資をどこに回すかといえば、上記1-④や2-③のように子ども手当に回すケースもあれば、基本給や業績手当等の諸手当、賞与、福利厚生費などに回すケースもある。後者で多いのは基本給の原資とするものだ。
基本給の原資とするときに検討が必要なのは、全社員に割り当てるか、それとも配偶者手当の受給者に割り当てるかである。
全社員に割り当てた場合、現在の配偶者手当受給者は賃金が減る可能性が高い。逆に、それ以外の社員は増額することになる。この場合、現受給者には不利益変更となるので、一定年数の受給額の保障などの経過措置が求められる。
配偶者手当の受給者に割り当てた場合は、原則、減額は生じないのでそのような経過措置は必要ない。
どちらにするかは企業の考え方次第だが、「偶々」もらっていた手当を該当社員に恒久化するよりは、全社員が享受したほうが合理性は高く、トータルで見ると社員の納得性も高いと思われる。