2024/8/11

カスハラ対策、まずは基本方針から

 パーソル総合研究所が6月に発表した調査では、顧客折衝があるサービス職の35.5%が過去に顧客からのハラスメント・嫌がらせ(カスタマーハラスメント)を受けた経験があるという。

 同調査で、カスハラ直後の心境として、「出勤が憂うつになった」が45.4%、「仕事を辞めたいと思った」が38.0%、「次の転職時は顧客やり取りの無い仕事につきたい」が37.5%となるなど、社員への負の影響は大きい。

 カスハラへの関心の高まりを受け、その対策に取り組む企業が増えてきているようだが、全体としてはまだ少数だ。厚労省の令和5年雇用均等調査によると、カスハラ対策について「一定の取組をしている」企業割合は24.3%、「今後取組を検討している」は 33.5%、「取り組んでいない」は42.2%であった。規模別にみると、企業規模が大きいほど取り組んでいる企業割合が高く、5,000 人以上では 63.4%、1,000~4,999 人では 46.1%、300~999 人では 40.3%、100~299人では 32.4%、30~99 人では 23.5%、10~29 人では 22.9%となっている。

 ところで、カスハラ対策として、企業はどのようなことに取り組めばよいか。基本となるのは以下のものだ。

(1)トップの基本方針・基本姿勢の明確化
(2)ガイドラインの策定
(3)サポート体制の整備 相談窓口、被害者のメンタルヘルスケア
(4)教育
(5)起きたときの対応の仕方
  ~事実関係の確認、事案への対応、社員のケア、再発防止措置

 このうち、まず大切となるのがトップの基本方針・基本姿勢である。詳細な制度づくりの前に、会社としてカスハラから社員を守る姿勢を打ち出したい。

 基本方針の中身だが、厚労省のカスタマーハラスメント対策企業マニュアルでは、基本方針に含める要素として、次のものを挙げている。
・カスハラの内容
・自社にとって重大な問題であること
・カスハラを放置しないこと
・カスハラから従業員を守ること
・従業員の人権を尊重すること
・周囲への相談を促すこと
・組織として毅然とした対応をすること

 これを踏まえ、次のようなものが考えられる。

1. 会社は、カスハラを容認せず、社員の安全と尊厳を守るために最善の努力を尽くします
2. カスハラが発生した場合、迅速かつ適切に対応します。
3. 社員はカスハラの被害を受けた場合、ためらわず、遠慮せずに報告してください。
4. 報告されたカスハラについては、徹底的に調査し、公平に対応します。

 カスハラというと、流通業やサービス業など、直接消費者を相手にする企業の問題と考えがちだが、法人相手の企業であっても起こり得る。特に相手が大企業であったりすると、理不尽な言動をされても忍耐を強いられる中小企業は多い。このときに「仕方がない、我慢しろ」という姿勢では、今の時代、社員が摩耗してしまう。

 改善の第1歩として、まずは基本方針だけでも策定してはいかがだろうか。基本方針を掲げるだけでも、社員の安心のためになる。そして、社員に伝えるだけでなく、ホームページ等で社外にも開示をするのがよい。カスハラへの感度の高さは、決して会社のマイナスイメージにはならないはずだ。これにより、社員の安心感をさらに高めることができると考えられる。    

 


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