2024/8/4

安定志向の高い新入社員

 産業能率大学総合研究所が7月18日に発表した「2024年度新入社員の会社生活調査」結果では、今年の新入社員の安定志向の高さが顕著に現れている。

 例を挙げると、「働くうえで重要なこと」の回答は以下の通りである(3つまで選択可)。
・長期間、安心して働けること(53.8%)
・仕事内容に見合う報酬が得られること(45.5%)
・仕事を通じて自分自身が成長すること(44.6%)
・組織や社会に貢献すること(33.6%)
・他のメンバーと協力して働くこと(28.6%)
・職場のメンバーから認められること(24.3%)

 Z世代の特徴とされる成長意欲や社会貢献意識、協働意識、自己承認欲求などを抑えて、安心して働けることがトップとなった。

 また、「働くうえで企業に求めるもの(あてはまるものをすべて選択)」としては、「長期的な安定性(76.0%)」が、2位の「社員への福利厚生の充実(56.5%)」を大きく引き離しての1位となっている。

 他にも、「年功序列と成果主義のどちらを望むか」で、年功序列が過去最高となったことや、「終身雇用制度を望むか」で7割近く(68.2%)が望むと回答したこと、「同じ会社に長く勤めたいと思うか」に対して、「思う」が8割以上となった(「思う」45.1%、「どちらかといえば思う」39.6%)ことなどからも安定志向の強さが見て取れる。

 また、「将来のキャリアについて」は、「管理者」52.9%、「エキスパート」40.1%に対して、「独立」は4.6%と非常に低い。独立志向は、2000年代初めには10%を超えていたが、2008年度以降、2020年度を除いて10%を切っている。近年はスタートアップ企業がもてはやされており、新入社員も独立志向が強いというイメージがあるが、実態は異なるようだ。

 去年も本コラムで、この調査について新入社員の保守化・安定志向化を指摘したのだが、それが一層進んでいるとの印象である。

 もっとも、昨今の若手社員には、あっさり退職をしてしまうイメージもある。安定を求めていながら、不安定な状態を選択する。一見、矛盾する行動にはどのような理由があるのだろうか。

 ヒトには元々、損をしたくない、リスクは回避したいという心理的傾向があるが、最近の若年者は特にそれが強いと思われる。コスパ・タイパを重視するのもその一環だろう。そう考えると、入った会社が自分の安定にとって損であり、リスクと感じられれば、さっさと見切りをつけるのかもしれない。

 一般に企業は若年社員にチャレンジを求めがちである。確かにチャレンジは必要だが、やみくもにチャレンジをさせても今の若年者には不安となる。安定や安心を提供しながらチャレンジをさせるという、少し(かなり?)手間のかかるプロセスが求められる時代になったと言えそうだ。   

 


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