中小企業が優秀な中途採用者を確保するためには、いくつかのポイントがある。ここでは、そのポイントを網羅的に示したい。現状の採用方法を検証してみてほしい。
1.多様なアプローチ
従来のようにハローワークや求人広告、HP等で募集をして応募を待つ、あるいは人材紹介会社に紹介してもらうだけでなく、人材バンクを通じてのスカウト型採用や、社員や関係者からの紹介によるリファラル採用、退職者を再雇用するアルムナイ採用など、多様なアプローチにより応募の窓口をつくる。
2.明確な職務内容とキャリアパスの提示
求人広告や面接時に、具体的な職務内容や将来的なキャリアパスを明確に説明することで、候補者が自分の将来をイメージしやすくなる。これと思った人材には、職務内容を説明したときに、なぜあなたが必要かを語る。そして、重要なのは将来のキャリアパスだ。当社でどのようなキャリアを積めるかを示せれば、応募者の気持ちに響くだろう。
3.柔軟な働き方の提供
リモートワークやフレックスタイム制など、柔軟な働き方を提供することで、優秀な人材を引き付けることができる。たとえば、週休3日を提示できれば、大きな魅力となる。
4.競争力のある給与と福利厚生
大企業と比較しても遜色のない、競争力のある給与や福利厚生を提供する。とはいえ、実際には大半の中小企業には難しい。そこで、単に給与月額や賞与額で比較するのではなく、たとえば、60歳を超えても給与の減額がないとか、70歳まで働けるとか、女性管理職が多いので、女性が頑張って管理職になれば高報酬になるなど、中小企業ならではの特長をアピールする。
5.会社の魅力のアピール
アピール内容は大きく2つある。1つは、企業文化や働きやすさ、社員同士のコミュニケーションの良さなどだ。社員の定着率(できれば中途採用者版も)、年休の取得率、女性の活躍度合い、男性育休の取得度合い、エンゲージメント調査の結果など、数値で示せるものがあれば納得性が高くなる。よい部分だけでなく、課題を示すのもよい。ただ、それだけだとマイナスになりかねないので、このような目標・取り組みをして課題の克服を目指していることも付け加える。入社前に課題を知ってもらうことで、入社後のギャップを防ぐことにもなる。
もう1つは、自社の製品・サービスが、消費者・ユーザーにどれだけ喜ばれているか、社会の役に立っているかのアピールである。これは特に若い人の心に刺さる。
6.オンボーディングの充実
入社後の不安を和らげ、早期に会社に溶け込んでもらえるよう、計画的OJTや研修、1on1面談、メンター制度等、オンボードのためのサポート体制が充実していることを説明する。
7.ブランド力の向上
業界内での認知度や評価を高めることで、求職者にとって魅力的な企業となるように努める。製品・サービスの業界、地域でトップの分野があるとアピール度が高い。ただ、ブランド力とは製品・サービスだけで培われるものではない。たとえば、社員を大切にする会社No1を目指し、「カスタマーハラスメントには全社で徹底して対応する」などもある。
8.ソーシャルメディアとオンラインプレゼンスの活用
ソーシャルメディアや企業のウェブサイトを活用して、自社の魅力や求人情報を広く発信する。応募者はほぼ100%、HPやSNSをチェックする。ここで大切なのは、継続性である。よくあるのが社長ブログを始め、当初は頻繁に更新するものの、やがてぱったり止まり、数年前のものが掲示されたままになっているケースである。たとえば、月に1回でよいので、社員が交代で発信するなどにより、継続性を持たせたい。
これらのポイントを考慮して採用活動を行うことで、中小企業でも優秀な中途採用者を効果的に採用する可能性が高まる。重要なのは、その全部に取り組もうとせず、重点化をすることだ。何に重点化するかは、業種・業態、会社の特性、企業規模、欲しい人材の種類、その他いろいろな要因で異なる。まずは、ポイントを網羅的に確認し、どれが自社に充足・不足しているかをチェックしてみてほしい。それぞれ点数をつけてみるのも良いと思う。