2024/6/9

IT企業の採用状況

 深刻な人手不足のなか、企業は厳しい採用状況にある。その中で例外ともいえるのがIT業界ではないだろうか。就活サービス会社の志望業界調査を見ても、一番人気はIT業界である。IT企業は採用活動が比較的順調に進んでいそうだが、実態はどうなのだろうか。情報労連の「ITエンジニアの労働実態調査2023」で確認してみよう。

 まず、正社員を計画どおりに採用できたかについて、回答は以下のようになっている。

「はい」61.0%
「いいえ」25.3%
「採用予定はなかった」5.4%
「無回答」8.3%

 「採用予定はなかった」「無回答」を除くと、採用予定のあった企業の3割ほどが計画どおりの採用をできていないことになる。「はい」の割合は、2021年・2022年に比べて減少しており、2023年の採用状況の厳しさがうかがえる。

 企業規模別の差異も下記の通り顕著である。

1000人以上:「はい」79.3%、「いいえ」13.8%
300~999人:「はい」72.7%、「いいえ」20.0%
100~299人:「はい」59.5%、「いいえ」28.4%
100人未満::「はい」48.2%、「いいえ」30.1%

 大企業に比べて中小企業の厳しさが目立つ。IT企業であっても規模の小さい企業は、採用に苦戦している様子が見て取れる。

 調査では、「いいえ」(=計画通りには採用できなかった)と回答した企業に、採用計画に対してどれくらいの比率で採用できたかを尋ねている。結果は以下の通りだ。

当初計画の「75%以上」26.2%
「50%以上、75%未満」44.3%
「50%未満」19.7%
「0%」8.2%

 おそらくほとんどは中小企業と思われるが、半数に到達できなかった企業が3割あり、1人も採れなかった(0%)企業も1割弱ある。「0%」は、2022年は4.2%だったことからして、ここにも採用状況が厳しくなっている傾向がうかがえる。

 採用には量の面と質の面がある。たとえ、計画通りの人数を確保できたとしても、質の面で要求水準に達していなければ、成功とはいえない。企業として求める水準の人材を採用できているかについて、以下の結果となっている。

「求める水準を超えた人材を採用」2.0%
「おおむね求める水準の人材を採用」79.6%
「求める水準に満たなくても採用」10.4%
「そもそも応募者が少ない」8.0%

 人材の奪い合いのなか、求める水準に満たない応募者であっても採用せざるを得ない企業が存在することがわかる。

 企業規模別ではやはり規模が小さいほど厳しい。100人未満は、「求める水準に満たなくても採用」が17.6%、「そもそも応募者が少ない」が14.9%と、100人以上に比べて、水準未満でも受け入れざるを得ない実態が浮き彫りとなっている。

 このようにIT企業といえども、採用はラクではないこと、厳しさが増す傾向にあること、特に大企業に比べて中小企業では厳しいことがわかった。

 調査は2023年の5月から9月に行われたものである。2024年の現在では、一層厳しさを増していることが推察される。    

 


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