「やりたい仕事のできる会社」「給料のよい会社」「安定した会社」の3つがあるとすると、学生はどれを選ぶだろうか? マイナビが4月16日に発表した「2025年卒大学生就職意識調査」によると、一番人気は「安定した会社」である。
来春、就職する大学生に、企業選択にあたってどのような企業がよいと思うか(2つ選択)を尋ねたところ、上位に挙がったのは以下のものである。
「安定している会社」49.9%
「自分のやりたい仕事(職種)ができる会社」28.6%
「給料の良い会社」23.6%
「勤務制度、住宅など福利厚生の良い会社」12.0%
「休日、休暇の多い会社」11.8%
「これから伸びそうな会社」10.2%
「安定している会社」は二人に一人が選んでおり、他を圧倒してのトップとなっている。4位以下は、上位3つに比べて数字は小さい。「安定している会社」「やりたい仕事のできる会社」「給料のよい会社」の3つが学生の行きたい会社の“御三家”といえそうだ。
ところで、この“御三家”だが、10年間の推移を見ると興味深い。ざっくり言えば、「安定している会社」と「給料のよい会社」が右肩上がりで増加しているのに対し、「自分のやりたい仕事(職種)ができる会社」は右肩下がりで減少しているのである。
10年前(2015年卒)の上位3つは、「自分のやりたい仕事(職種)ができる会社」40.3%、「安定している会社」27.3%、「働きがいのある会社」19.7%だった。「給料の良い会社」12.4%で第5位である。
ジョブ型志向が強く、やりがいを重視するというイメージのある現代の学生からすれば、10年前の結果の方が妥当のように思えるが、実際は「安定」や「給料」を重視するのが今の学生ということだ。それだけ社会・経済に対する不透明感や不安感が強いのかもしれない。「給料」が伸びているのは、近年の物価高や賃上げが背景にあるからだろう。
さて、今度は逆に「行きたくない会社(2項目まで選択)」を見ると、上位は以下の通りとなっている。
「ノルマのきつそうな会社」38.9%
「転勤の多い会社」30.3%
「暗い雰囲気の会社」24.8%
「給料の安い会社」14.5%
「仕事の内容が面白くない会社」13.9%
「残業が多い会社」13.9%
「ノルマ」「転勤」「暗い」が行きたくない会社の“御三家”である。ただ、この3つも10年スパンで見ると大きな変動がある。「ノルマのきつそうな会社」「転勤の多い会社」が伸びた一方で、「暗い雰囲気の会社」は減少している。御三家の中でも「ノルマ」と「転勤」は、競争や強制は苦手とされる最近の学生にとって、特にNGと言えそうである。
少し乱暴だが、学生の言い分をまとめると、「(安定している)大企業がいいけど、転勤は嫌だ」「給料は高いほうがいいけど、(ノルマがあるような)ハードワークは嫌だ」となる。これを学生のワガママと切り捨てるのは簡単だが、そうすると、新卒採用は行き詰ってしまう。可能な限り対応していかなければならない企業側も大変である。