最近は年上の部下が増えている…と言うよりも、いるのが普通になっていると言ったほうが適切だろう。産業能率大学の第7回「上場企業の課長に関する実態調査」によると、課長の半数以上(55.1%)が「自分より年上の部下」を持っているとのことだ。
背景には、ポスト不足で管理職に昇進できない人が増えたこと、年功によらず能力ある若手を管理職に登用するケースが増えていること、65歳までの雇用が義務化され、その多くが役職者ではないこと、などがある。
今後、65歳超雇用が進むことを考えると、年上の部下がますます増えることは間違いない。
そうした中で、かつてほどはないにしても、年長者を尊重する文化が深く浸透している日本では、年上の部下のマネジメントというのは、気苦労が多そうだと誰しもが想像する。実際、悩みを抱える管理者も少なくないはずだ。そして、今はいなくても、今後、持つことになるのはかなりの確率であり得る。
それでは、年上の部下を持ったときに、どのような点に気をつけるかと問われれば、次の2つがまず頭に浮かぶのではないだろうか。
①部下であっても丁寧な言葉遣いをする
②仕事を任せ、あまり口出しをしない
いずれももっともなことだ。上司になったからといって、“ため口”が許されるわけではないし、経験豊富な年長者にあれこれと口出しすれば、プライドを傷つけるのは当然である。
確かにこの2つは、年上の部下のマネジメントの基本なのだが、注意しなければならないのは、この2つに配慮しすぎると、年長者がチームの中で浮いた存在になりかねないことである。年長者の立場に立てば、飾り棚に置かれた人形のような疎外感を受けることになる。「尊重している」も度が過ぎると、「厄介者扱いしている」になってしまうのだ。
サイボウズ社が2023年7月発表した「年上の部下へのマネジメント」調査で、年上の部下へのマネジメントに必要と思うこととして、年下の上司側の意見で最も多がったのは「敬語・丁寧な言葉遣い」41.9%だった。一方、年上の部下側は27.7%とギャップが大きかった。つまり、「丁寧な言葉遣い」は、年下上司が考えるほど、年下部下は気にしていないのだ。ちなみに、年上の部下の意見で最多だったのは、「部下の話を聞く」43.2%である。
逆に、年上の部下の意見が多くて、年下の上司の意見が少なかったのは「部下のミスのフォロー」である。年下上司からすれば、年上部下のミスを自分がフォローするのは、相手のプライドを傷つけるようで気が引けるが、部下の方は必ずしもそう思っていないということだ。
この調査からわかるのは、仕事を任せるのはよいが、ほったらかしにはせず、適当なタイミングで意見を聞いたり、必要なフィードバックをすることも大切ということだ。言葉を換えると、年長部下は「しっかり仕事をて、チームの役に立ちたい」と思っているということだろう。
年上の部下が望んでいるのは「過度の尊重」ではなく、「チームの一員としての貢献」であることをまずは認識しておきたい。