日本商工会議所が1月31日に発表した「商工会議所LOBO(早期景気観測)」1月調査結果で、「新卒採用(2024年4月入社)の動向」をトピックスに掲げている。中小企業の新卒採用状況がわかるので確認しておきたい。
新卒採用を実施した企業のうち、「計画通り採用できた」のは前年比6.4ポイント減の26.0%である。一方、「採用できたが計画した人数には満たなかった」は43.2%(前年比1.3ポイント増)、「募集したが採用できなかった」は30.8%(前年比5.1ポイント増)と、計画通りに採用できていない企業の割合が高まっている。
人手不足のなか、中小企業が人材確保に苦闘している様子が見て取れる。調査では、「学生からの問合せはほとんどない」「手ごたえが全くない」といった中小企業の悲痛な声を取り上げている。
激しい争奪戦においては、採用活動の努力や工夫が求められる。採用活動にあたって取り組んだ事項としては、「会社説明会の開催や合同説明会への出展」55.8%、「インターンシップや職場体験会、社員との交流会の開催」52.6%、「初任給の引き上げ」50.2%、「採用ホームページの作成や求人サイトへの掲載」47.4%、「学校との連携」47.4%となっている。やるべきことはそれなりにやっているものの、逆に言えば、どこも同じような取り組みをしていて、自社のアピールができていないともいえそうだ。
リクルートワークス研究所によると、2024年3月卒業予定の大卒求人倍率は 前年比0.13ポイント増の1.71倍で、売り手市場が強まっていることがわかる。注意したいのは、これは大企業を含めた数字であり、300人未満の中小企業に限れば、数字は6.19倍に跳ね上がる。企業からすると、6社の中から選んでもらわなければならない超売り手市場となる。
ちなみに300人~999人、1000~4999人はいずれも1.14%、5000人以上は0.41倍なので、明らかな売り手市場にあるのは中小企業だけというのが実態である。
規模間で大きな差があるということは、中小企業の中でも格差があることになる。詳細はわからないが、200人以上であれば2倍以下であり、50人未満であれば10倍、あるいは20倍以上といった数字もあり得る。そうなると、「募集したが採用できなかった」企業が3割を超えるのもうなずける。
対応として重要なのは自社のアピールであり、そのためにまず、自社のアピールポイントをあらためて確認しておきたい。その際、「アットホーム」だとか「能力が活かせる」「成長できる」とかの通り一遍のフレーズではなく、「(仕事以外でも)何でも聞ける職場」「一年間、社員全員で鍛えます」「今は10%だが10年後に女性管理職50%を目指す」「給料以外は全部情報開示」などの尖った特徴を示したい。そういった特徴に共感して入る人材ならば、入社後のミスマッチも減らせるはずだ。一度、社員全員で考えてみてはいかがだろうか。