中学や高校で学習したことがあると思うが、労働三法とは、労働基準法、労働組合法、労働関係調整法の3つである。この3つを労働三法というのは、憲法第27条の勤労権と第28条の団結権を具体的に保護する法律だからだ。
もっとも、労基法はともかく、労働組合法、労働関係調整法の2つを会社生活で意識することはあまりないと思う。この3つを労働三法と言われてもピンと来ないのが大多数の意見だろう。
労働組合の組織率は、1949年の55.8%をピークに、1953年に40%を割り、1983年には20%台に、2003年には20%を切り、本年2023年は16.3%で過去最低となっている。現在では雇用者の8割以上が労働組合とは縁がなく、したがって、労組法も労調法も多くの労働者には、直接的には関係のない法律となっているのが実状である。
ちなみに3つの中で最も古いのは労組法で、1945年12月の制定である。次いで、1946年9月に労調法が、1947年4月に労基法が制定されている。労組法と労調法は、日本国憲法の公布(1946年11月)よりも早く制定されていることに驚く。終戦直後の混乱時において、労働者の民主化とそのルールづくりが急務であったことが推察される。
それはともかく、労働者にとって重要という意味での現代版労働三法を選ぶとどうなるだろうか。労働基準法が引き続き入ることに異論はないと思うので、労組法と労調法の代わりに2つを選ぶことになる。
まず、筆頭候補となるのは労働安全衛生法だろう。安衛法は労基法の安全衛生に関する部分が1972年に分離・制定されたものなので、元々は労働三法に含まれていたといえる。
内容的にも、労働者の健康という重要事項を保護する法律であり、労働法の中で重きをなすのは間違いない。メンタルヘルスケアが重要視されるようになった現代では、製造、運輸、建設といった現業だけでなく、事務、営業、販売といった部門でも関係性の高い法律である。ということで、2つ目は安衛法でよいのではないかと思う。
さて、残りの1枠だが、労働契約法を挙げたい。
労契法は、労働者個人と使用者との間の労働契約の基本ルールを定めたものだ。労働契約は、労働条件の最低基準を定めた労基法の基準以上でなされる。つまり、労基法を上回る労働条件を保護するものが労契法であり、その意味で労働者の職業生活あるいは私生活に重要な影響を与えるといえる。2007年の制定と新しい法律だが、それまでの重要判例を法律化したもので、個別の労使関係を律する法規として、労組法や労調法よりも、広く労働者をフォローできるのも特長である。
次点となるのは、男女雇用機会均等法である。均等法は、性別による差別の禁止やセクハラ、マタハラなどの規定を盛り込んだ法律である。1985年の制定以来、男女が平等に働ける就業環境づくりに大きな役割を果たしてきた。もちろん、まだ十分とはいえず、実質的な差別は様々な形で存続する。そのような差別を完全になくすためにも、均等法の存在意義はこれからも大きいといえる。
他にも、労働者派遣法や短時間有期雇用労働法、育児介護休業法、職業安定法などもあるが、対象者や適用される場面が限られているので、労働者全体から見た重要性ではワンランク下がると思われる。
ということで、現代版労働三法は、労働基準法、労働安全衛生法、労働契約法の3つとなった。人事担当者にアンケートを取っても、おそらくこの3つが選ばれると思うのだが、いかがだろうか。