近年、ワークライフバランスの浸透で注目されるようになったのが「つながらない権利」である。つながらない権利とは、「勤務時間外や休日に仕事上のメールなどへの対応を拒否できる権利」のことだ。
休日でくつろいでいるときに、上司や取引先から業務上の連絡を受けた経験は、多くの社員にあるだろう。
連合が12月7日に発表した「"つながらない権利"に関する調査2023」によると、「勤務時間外に部下・同僚・上司から業務上の連絡がくることがある」と回答したのは雇用者の72.4%にのぼった。また、「勤務時間外に取引先から業務上の連絡がくることがある」との回答も44.2%あった。
このような勤務時間外の業務連絡は、気にしないようにしてもやはり気になるものだ。同調査では、部下・同僚・上司からの連絡には62.2%が、取引先からの連絡には60.9%がストレスを感じると回答している。
勤務時間外というのは、仕事をしなくてよいことが保障された時間である。業務として身体を動かすことのみならず、業務について考えることからも一切解放される時間となる…はずだが、連絡が来たことがわかれば、仕事に気持ちを向けざるを得なくなる。厳密に言えばサービス残業となるわけで、そのモヤモヤ感がストレスとなるのは容易に想像できる。
社員もできることなら、勤務時間外の業務連絡はやめてほしいと思っているようだ。「勤務時間外の部下・同僚・上司からの連絡を制限する必要があると思う」は 66.7%、「勤務時間外の取引先からの連絡を制限する必要があると思う」も67.7%と、それぞれ3分の2にのぼる。
では、実際にそのような制限があるかといえば、「勤務時間外の業務上の連絡について、公式・非公式を問わずルールがある」のは25.8%、「取引先との業務上の連絡」は19.9%と少数である。
2017年に、つながらない権利を労使間で協議しなければならないことを50人以上の企業に義務付けたフランスをはじめ、一部のEU諸国では法制化が進んでいる。
日本では今のところ表立っての動きは見られないが、企業として一定のルールを設けるのは検討してもよいだろう。
よくあるのが、「対応は休み明けでよいから」だとか、「ちょっと思いついたのだけれど、忘れないうちに」などの理由で、上司が安易にメールを送るケースである。送信側は軽い気持ちで送ったとしても、受け取る部下は気になるものだ。と言って、休日には送らないでくださいとは、部下からは言いづらい。会社として一定のルールを設ける必要性は高い。
その際、すべて禁止にするというのは現実的でないので、特に必要のあるものを除き、原則禁止にするというのが妥当だろう。また、特に必要のあるものであっても、それを受信しなかったからといって、不利益を受けることのないようにすべきである。