2023/10/28

新規学卒者の離職状況

 10月20日、厚生労働省が2020年3月に卒業した新規学卒就職者の離職状況を公表した。卒業後3年以内の離職率は、大卒32.3%(前年比0.8ポイント上昇)、高卒37.0%(同1.1ポイント上昇)である。

 一般に、大卒者は3年で3割が退職すると言われており、その通りの数値となった。ただし、これは全体の平均値であり、属性ごとに見ると結構な違いがある。

 1つは企業規模による違いだ。大卒の数値は以下の通りとなっている。

・5人未満(54.1%)
・5~29人(49.6%)
・30~99人(40.6%)
・100~499人(32.9%)
・500~999人(30.7%)
・1,000人以上(26.1%)

 ざっくり言えば、零細企業5割、中小企業4割、中堅・大企業3割である。規模が大きくなるほど低くなるのは、賃金や労働時間、福利厚生等の待遇面が良くなること、安定性があること、自社に適した人材を確保できることなどの理由が考えられる。

 もう1つは業種による違いである。大卒者の離職率の高い業種は以下の通りだ。

・宿泊業、飲食サービス業(51.4%)
・生活関連サービス業、娯楽業(48.0%)
・教育、学習支援業(46.0%)

 一方、低い業種は以下の通りである。

・電気・ガス・熱供給・水道業(10.5%)
・鉱業、採石業、砂利採取業(13.5%)
・製造業(19.0%)

 業種による高低の違いは、規模間と同様の待遇面の差のほかに、顧客と直接接することによる仕事上のストレスの大きさも一因と考えられる。

 このように規模・業種による違いがあるので、大卒者の3年離職率が3割であったとしても、その妥当性の判断はその企業の属性によって異なる。従業員30人の飲食業であれば「頑張っている」といえるだろうし、300人のメーカーであれば「少し多めだな」との認識が必要だろう。

 さらに言えば、規模・業種を考慮して妥当であったとしても、それで満足すべきではない。縁あって入社した新卒者の離職をできるだけ減らすよう努力が求められる。特に中小企業では経営者の工夫や努力により離職率が劇的に改善するケースが多い。その努力は、既存社員の定着にも好影響を与えるはずである。    

 


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