2023/9/17

組織図を逆にしてみよう

 2009年から2017年まで大学選手権を9連覇した帝京大のラグビー部や、国立大学でありながら強豪として知られる京都大のアメリカンフットボール部では、上級生が雑用をこなすという。上級生が文句を言わないよう、監督やコーチも進んで雑用を引き受けるそうだ。

 組織で一番偉いのは1年生。組織図で言えば一番上に1年生がくる。会社に置き換えると、一般社員が一番上で、以下、主任・係長、課長、部長、取締役と続き、最下層に社長がくる。こうすると違った風景が見えてくる。

 まず、社長の存在がちっぽけで頼りなく見える。「社長は孤独」とよく言われるが、その孤独感が一層浮き彫りになる感じがする。

 社長は一番下で、一人で全社員を支えているようにも思えるが、社員に押しつぶされそうになっているようにも見える。社員には家族がおり、間接的にその家族も支えていることになり、プレッシャーは相当なものであることが想像できる。

 もちろん社長が社員の生活に責任を持たなければならないというわけではないが、多くの時間を会社で過ごす社員の人生に少なからぬ影響を与えるのは事実だろう。社長の責任の重大さを再認識できる。

 救いは、社長一人が全社員を直接支えているわけではなく、取締役以下の管理職・社員に分担してもらっていることだ。社長一人に負担がかからないよう、重みを分け合っている。そのありがたみを理解できるかどうかは、社長のセンス次第だが。

 社長が最下層にくる逆組織図で、もう一つ重要なことがわかる。それは、企業にとって大切なのはお客様ということだ。もちろん、そのことは皆が理解しているはずだが、実際には、お客様よりも社長や上司を大切にするケースがある。

 世間からたたかれるような不祥事の多くはこのケースで、お客様の利益よりも経営者や上司の意向を優先した結果である。特にカリスマ社長が君臨しているような企業では顕著となる。

 エライのは社長ではない。組織で社長や上司が一般社員よりも上に来ているのは組織の機能としての必要性からであり、何もヒトの序列を示しているのではないことを、あらためて認識したい。逆組織図はそのきっかけとなるはずだ。

 トップというのは他者よりも仕事ができる、あるいは何らか優れているからその地位についている。中小企業であれば会社の所有者としてトップの立場にいる人も多い。そうすると、自分が上であるとの認識から、社員を見下しがちだ。

 思い通りに動かない社員に不満を持ち、イライラを募らせ、ときに癇癪を起していないか。社員がいなければ、実は何もできないのではないか。もっと謙虚さが必要ではないか。社長には、一度組織図を逆さにしてみることをお勧めする。       

 


 過去記事は⇒ミニコラムもご参照ください。
 お問い合わせは⇒お問い合わせフォームをご利用ください。

にほんブログ村 経営ブログ 人事労務・総務へ

にほんブログ村 士業ブログ 中小企業診断士へ
 

PVアクセスランキング にほんブログ村
にほんブログ村に参加しています。