2023/8/13

定年延長時の退職金

 65歳までの雇用の仕方として、再雇用制度等の継続雇用制度がまだ主流であるが、定年延長(定年の引上げ)の存在感も高まっている。厚生労働省の令和4年「高年齢者雇用状況等報告」では前年比1.4ポイント増の25.5%となっており、企業の4分の1を占めている。

 定年延長にあたっては、60歳以降の賃金をどうするかと、退職金をどうするかという課題が生じる。ここでは後者の退職金について整理してみたい。

 選択肢としては、大きく次の3つとなる。

①増額する
②減額する
③そのまま(65歳で退職しても同額)

 退職金には主に、功労報奨、賃金後払い、老後生活保障の3つの性格がある。①の増額は、功労報奨と賃金後払いを主眼に置いた考え方だ。60歳定年よりも5年長く勤めたのだから、その分退職金は増やすというロジックである。

 ②の減額は、老後生活保障に主眼を置いた考え方だ。65歳まで正社員として処遇するのだから、その分、老後の生活保障は少なくて済むので退職金を減額するというロジックである。このとき、60歳以降の賃金は減額されないことが前提となる。継続雇用のときよりも賃金を増やす代わりに、退職金は減らすということだ。

 ③は両者の折衷案といえる。仕組みとしては、60歳以降の退職であれば退職金は同額とするものだ。制度づくりの手間を省けるのが大きなメリットである。

 どれを選択するかは、企業の退職金の考え方や人材戦略、許容人件費によることになる。ただ、許容人件費については60歳以降(場合によっては60歳前)の賃金とセットで検討する必要がある。

 また、当然ながら不利益変更にも留意しなければならない。その意味で②の減額は、60歳までの退職金は現状を維持することや、生涯年収は現状を上回るようにすることなど、設計の工夫が求められる。

 参考までに、今年度から定年が延長されることとなった国家公務員の退職金は「増額」である。具体的には、60歳時の給与で計算した60歳までの分と、65歳定年時の給与で計算した61歳以後の分とを合算することになる。2つに分けているのは、国家公務員の退職金は基本給連動方式であり、61歳以後の給与は60歳時の7割になるからである。

 ちなみに、60歳以後、定年前に自己都合で退職したとしても、当分の間は定年退職事由で計算するとのこと。国家公務員と同様に、基本給連動方式で60歳時に給与が減額となる場合は、設計の一例となるだろう。

 いずれにしても、定年年齢が伸びることにより、社員からすると退職金の受け取り時期が遅れることになる。中には60歳での支給を前提にライフプランを設計している人もいるだろう。そういった社員が困らないよう、60歳で受け取れるような選択肢を設けることも移行措置として求めれられる。     

 


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