2023/8/6

エライ人ほどパワハラをする?

 パワーハラスメントの行為者と言えば、まず上司が思い浮かぶのではないだろうか。実際、パワハラの当事者で一番多いのは上司部下間である。

 厚生労働省の令和2年度「職場のハラスメントに関する実態調査」によれば、パワハラの行為者と被害者の関係(複数回答)は、

・上司(役員以外)から部下へ(76.5%)
・会社の幹部(役員)から部下へ(11.1%)
・同僚同士(36.9%)
・部下から上司へ(7.6%)

 となっており、経営者を含む上司によるものが非常に多いことがわかる。

 もちろん、パワハラというのは、“優越的な関係が背景にあること”が前提となるので、当然に上司部下間が多くなるものだが、それを差し引いても、上司によるパワハラが目立つのが実態ではないだろうか。

 そこで考えられるのは、そもそも管理職になる人にはパワハラ傾向のある人が多いという仮説だ。極論だが、パワハラをまったくしないような人はエラクなれない。これは、筆者の経験上の実感でもある。

 管理職になる人は、一般社員として成果・実績を認められた人である。競争を好まず、誰にでも優しく、自己主張を控え、他人に無理な依頼をしたり、指示したりすることを好まないような人が、社員として成果を上げられるかといえば、そうではないだろう。成果を上げるためには、ときとしてハラスメントが生じるような人との摩擦が避けられないからだ。

 そういった意味で、多少アクの強い人は成果を上げることが多い。その成果をもって管理職に登用された場合、パワハラ上司となりやすいのではないだろうか。

 そのことを理論的に裏付ける話が、「パワハラ上司を科学する」(津野香奈美著:ちくま新書)という本に書かれていた。

 同書では、パワハラ行為者の性格的な特徴をビックファイブと呼ばれる性格類型から指摘している。ビックファイブとは、開放性、誠実性、外向性、協調性、神経症傾向の5つだ。

 同書によれば、外向性が高く、誠実性、協調性の低い人がパワハラ傾向にあるとのことだ。協調性が低い人は、他人のために時間を使おうとせず、誠実性が低い人は、物事にルーズであったり、おっちょこちょいであったりするという特徴がある。陽気で人といっしょにいることが好き。よくも悪くも目立つ存在であり、地位の上の人から好まれるタイプといえそうだ。

 さらに同書では、特にパワハラと結びつきやすい“邪悪な性格特性”として、マキャベリアニズム(目的のためには手段を選ばない人)、サイコパシー(良心が欠如している人)、ナルシシズム(自分は特別な存在と思っている人)の3つを挙げている。これらは、「冷淡さ」「罪悪感のなさ」「自己中心性」を持っているのが共通しているという。

 厄介なのはこういった性格の持ち主は、自身に満ちた態度で、かつ一見人当たりもよく、自己アピールがうまく、(他者を利用することで)成果・業績を上げることも多いため、深い付き合いのない人(典型的なのは経営者や上級幹部)などから評価される存在という。

 実際、中小企業などでは、パワハラ部長がいても、交代させると業績がガタ落ちになってしまうので、経営者が放置しているというケースが見られる。経営者からすると、「そんなに悪い人」とは映らないのだ。

 ちなみにナルシシズムは一般の人の中に最大6%いるとの報告があるそうで、多くの会社にいる可能性が高い。思い当たる人も多いのではないだろうか。     

 


 過去記事は⇒ミニコラムもご参照ください。
 お問い合わせは⇒お問い合わせフォームをご利用ください。

にほんブログ村 経営ブログ 人事労務・総務へ

にほんブログ村 士業ブログ 中小企業診断士へ
 

PVアクセスランキング にほんブログ村
にほんブログ村に参加しています。