厚生労働省が「労働者の働き方・ニーズに関する調査(中間報告)」というのを公表した。この調査で面白いのは、様々な働き方・ニーズに関する回答を社員の年収別に集計しているところである。年収の高低により、働き方のニーズが違うのか、違わないのか確認してみよう。
なお、調査では年収を「300万円未満」「300~500万円未満」「500~1000万円未満」「1000万円以上」の4つに区分しているが、ここでは単純化のため、「300万円未満」と「1000万円以上」の2つで対比したい。
まず、「今後、賃金は働いた時間より成果に基づいて決めるべきか」について、「そう思う」(「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の合計、以下同じ)の割合は次の通りだ。
・300万円未満(62.3%)
・1000万円以上(70.4%)
年収の多い人は成果重視の傾向があることがうかがえるものの、大差はない。年収にあまり関係なく、成果重視の考え方が優勢であるといえる。
「今後、社員の雇用安定に最優先に考えるべきか」について、「そう思う」は以下の通りだ。
・300万円未満(79.2%)
・1000万円以上(74.2%)
年収の少ない人ほど雇用安定を重視し、高収入者はそれほど重視しないのではというイメージがあり、両者にもっと差が出るのではと思ったが、意外に小差である。
「一つの企業で働くことをこれまで以上に重視するか」では、「重視する」は以下の通り。
・300万円未満(56.5%)
・1000万円以上(68.8%)
これも同様に、両者にもっと差が出ると思ったが、それほどの差はない。
このように成果主義や雇用安定、長期雇用に関しては、年収の高低による差はあまりないようだ。
それでは、どのような面に差が出ているかと言うと、仕事の裁量に関してである。以下、3つの質問を見てみよう。
「今後、仕事の手順を決定する際の、自分の裁量を増やしていきたいか」について、「そう思う」の割合は、
・300万円未満(45.1%)
・1000万円以上(70.4%)
「今後、仕事の時間配分を決定する際の、自分の裁量を増やしていきたいか」について、「そう思う」の割合は、
・300万円未満(45.7%)
・1000万円以上(71.5%)
「今後、勤務場所を決定する際の、自分の裁量を増やしていきたいか」について、「そう思う」の割合は、
・300万円未満(38.1%)
・1000万円以上(64.5%)
このように仕事の裁量に関するニーズは、年収の高低で明らかに違うことがわかる。1000万円以上は管理職や専門職が多く、裁量の度合いが大きい非定型業務や創造型業務に従事する一方、300万円未満は一般社員が多く、裁量の度合いが小さい定型的業務に従事していることが背景にあると思われる。
もう1つ、両者に差があるものを指摘したい。「将来、どのような働き方をしたいと思うか」である。いくつかの項目のうち、差が顕著なのは以下のものである。
「会社幹部、管理職としてマネジメントの仕事に就きたい」
・300万円未満(2.7%)
・1000万円以上(20.4%)
「専門的な知識・技能を活かせる仕事に就きたい」
・300万円未満(21.8%)
・1000万円以上(41.9%)
「なりゆきにまかせたい」
・300万円未満(42.6%)
・1000万円以上(21.5%)
将来のキャリアをきちんと考えるかどうかが、年収の差に現れてくることが示唆される。