先月、パナソニックホームズが退職した従業員を再雇用する「ウェルカムバック採用」制度の開始を発表した。これまでは、再雇用の退職事由を「結婚・育児・介護」に限定してきたが、新制度では過去の退職事由を限定しないという。
また、JR西日本グループでも同様の制度を開始した。これまで育児等で退職した人を対象としていた再就職支援制度を拡充し、キャリアアップ等の理由で退職した人も対象とする「カムバック採用」である。
これらはアルムナイ採用と呼ばれる。アルムナイ(alumni)とは、英語で「同窓生」を意味する。定年退職以外で退職した人を再度採用する手法である。
退職者の再雇用と言えば、上記の事例にもあるように、結婚や出産を機に退職した社員を、子育てが一段落した段階で再雇用するのが通例であった。それ以外の自己都合退職者は、「再雇用などあり得ない」というのが会社・退職者双方の認識だった。なぜなら、定年まで勤めあげることを前提に、会社への忠誠を重視する日本企業においては“裏切り者”だったからだ。
ところが、定年まで勤めるのが当然という考え方が薄れてきた今日、自発的に会社を去った人でも再度迎え入れる企業が増えてきた。もっと言えば、積極的に歓迎するようになっている。
理由としては、業務内容はもちろん、会社の文化や風土をよく理解していることが大きい。中途採用者の最大の懸念は自社の文化に合うかどうかだが、その点をクリアできているのである。また、会社も本人の能力や適性をよく知っており、入社後のミスマッチを防げる。
一方で、他社での経験を活かして、会社に刺激を与えてくれるという、中途採用のメリットも期待できる。いわば、人材の内部調達と外部調達の“いいとこ取り”ができるわけである。
背景には人材の争奪戦が激化していることがある。一度辞めたという理由で、有能な人材を排除してしまうのはもったいない。むしろ、縁のある人として、自社のアドバンテージとすべきという考え方になってきている。
その他、在宅勤務により勤務場所にとらわれない働き方やジョブ型雇用で職種限定の働き方ができるようになってきたことも後押しをしている。これらがネックとなって退職した人は、仕事内容に不満があるわけではないので、再度その会社で働く意欲が高まるはずだ。
もっとも、アルムナイ採用はまだ一般的なものではなく、“出戻り”といった冷ややかな視線で見る社員も少なくない。勤務を続けた同期社員と同じ、あるいはより上位の職位に就いたときは、やっかみや嫉妬など複雑な思いを抱く社員も出てくるはずだ。そういった意味で周囲からの目は厳しくなる。「他でもやったけど、やはりこっちの方がよさそう」といった安易な考えでは、苦労が予想される。
企業としても、「自社のことはよく知っているはずだから、特別なフォローはしない」という扱いはよくない。ブランク期間にもよるが、基本的には、人事部門等の定期的な面談やメンターの設置など、通常の中途採用者と同様のフォローをすべきだろう。