2021年の米ギャラップ社の調査によれば、日本でエンゲージメント(仕事への熱意や組織に対する貢献意欲)を持っている人の割合は5%で、米国の34%、中国の17%などに比べて大きく劣る。ちなみに、世界平均は20%である。
もっとも、この国でわずか5%の人しか意欲をもって働いていないかといえばそうではないと思う。この辺は“調査のアヤ”と言えるだろう。
経団連が1月17日に発表した「2022年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査」でも同様の調査を行っているので、結果を見てみよう。
●社員のエンゲージメントの現状
・全体的に高い状況にある(18.2%)
・高い層と低い層がある(53.5%)
・全体的に低い状況にある(10.2%)
・わからない(調査していない)(18.2%)
ギャラップ調査で見るよりも、エンゲージメントは高そうである。「高い層と低い層がある」が過半となっているが、これは当然のことだろう。では、「高い層」とはどういうものだろうか。筆者の感覚では、年齢が高くなるにつれてエンゲージメントが高まる、つまり右肩上がりのイメージなのだが、回答は以下の通りである。
●エンゲージメントが高い層(複数回答)
・シニア管理職(81.4%)
・シニア非管理職(30.4%)
・ミドル管理職(74.9%)
・ミドル非管理職(24.3%)
・中堅層(24.0%)
・若手層(28.9%)
若年層から中堅・ミドル層にかけて低くなり、シニア層にかけて再び高くなるという“なべ底型”となっているのがわかる。もっとも、数値にそれほどの差はなく、浅いなべ底である。むしろ、差異の要因は管理職か非管理職かのようで、こんなにも大きな違いがあるのかと驚く。
ちなみに調査の回答者は労務担当役員ということである。役員が普段、直接コミュニケーションを取るのは管理職が多いと思われ、その管理職が役員の前で熱意のない姿勢を示したりはしないだろから、このように管理職の数値が高くなったのかもしれない。
それはともかく、全般に管理職の方が仕事に対する熱意が高いというのは筆者も同意見である。熱意が高いから管理職になれたともいえるが、1つの要因として指摘できるのは、“やりがい”や“達成感”の大きさである。管理職であれば、会社の業績・業務の一定範囲を担うことになり、やりがいは一般社員に比べて大きくなるといえる。ある企業は管理者に明確な予算責任を持たせており、これが管理者の大きなやりがいとなっている。
もっとも、管理職であれば当然にやりがいを得られるわけではない。やりがいをもってもらうためには、求める役割や成果をはっきりさせること、その達成に向けできるかぎり大きな裁量を与えること、が重要であろう。これは、管理職だけでなく、一般社員にもいえることだ。
経団連の調査では、「社員のエンゲージメントを高める施策」についても質問しており、企業があれこれと知恵を絞っていることがうかがえるが、施策とは別に、仕事の与え方もエンゲージメントを高めるための重要因子となることを知っておきたい。